研究概要 |
本研究課題では、d-π電子相関系機能性高分子の創出が可能な多機能元素ブロックとしてジピリド[3,2-a:2',3'-c]フェナジン(dppz)骨格を選択し、その電子アクセプター機能や金属配位能を利用して、発光性π共役高分子や高分子半導体などの機能性高分子の創出を目指している。平成25年度は発光材料を中心に、dppzを基盤とする機能物質の創出について検討した。 dppz骨格の電子アクセプター特性を利用して、強発光性ドナー-アクセプター-ドナー(D-A-D)型発色団の創出に成功した。dppz自体はほとんど発光しないが、10,13位もしくは11,12位にドナー性原子団を導入することで、分子内電荷移動(ICT)遷移に由来する効率的な蛍光が得られた。これらD-A-D型分子を配位子とする白金(II)錯体を合成し、発光特性を調べたところ、配位子よりも赤色シフトした発光が得られた。発光寿命測定から、観測された発光は蛍光に帰属され、ルイス酸である白金(II)がICTを促進したために赤色シフトすることがわかった。 2,7位にドナー性原子団を導入したdppz-白金(II)錯体も弱い蛍光を示すが、白金中心に結合する塩化物イオンをフェニルアセチリドに置換したところ、赤橙色のりん光が得られた。10,13位にドナー性原子団を導入したアナログ錯体では極めて弱い蛍光しか得られないことから、りん光性分子を得るにはドナー性原子団の導入位置が重要であることがわかった。 モノマーとしてdppz骨格を用い、フルオレン系π共役高分子の合成を試みた。重合度が低いためにオリゴマー程度の化合物しか得られなかったが、フィルム成膜性に優れるため、当該化合物を用いて非ドープ型有機電界発光素子(OLED)を作製した。素子性能は効率的でないものの、電圧印加によって発光材料由来の橙色電界発光を得ることに成功した。
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