研究領域 | 元素ブロック高分子材料の創出 |
研究課題/領域番号 |
25102538
|
研究種目 |
新学術領域研究(研究領域提案型)
|
研究機関 | 中央大学 |
研究代表者 |
鈴木 克規 中央大学, 理工学部, 助教 (60455350)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
|
キーワード | 典型元素 / 共役系 / ホウ素 / 共役系高分子 |
研究概要 |
パイ共役系高分子はその電子物性から有機材料への応用が期待されており、研究が盛んに行われている。その中でも近年になり共役系骨格にホウ素-窒素B-N結合を含む共役系がその元素に由来する物性から注目されはじめている。このB-N含有共役系分子を高分子化することでより優れた電子物性を持つ材料の創製が期待できる。本研究では元素ブロックとして1-アザ-4-ボラナフタレンおよび9-アザ-10-ボラアントラセンを用い、このホウ素および窒素間のルイス酸-塩基錯形成によりB-N含有共役系高分子を合成する。さらにこれを酸化処理することで元素ブロックを軸とする安定なシート状共役系骨格へと誘導する。得られる一次元B-N含有共役系高分子およびシート状元素ブロック高分子の物性評価が本研究の目的である。初年度は、この元素ブロックの前駆体となる1-アザ-4-ボラナフタレンおよび9-アザ-10-ボラアントラセンのルイス塩基錯体の合成およびその高分子化を検討する計画であり、その計画に従い初年度の研究を行った。初年度の研究実績として元素ブロック9-アザ-10-ボラアントラセンの前駆体となり得るジクロロボリル基とクロロ基が置換した9-アザ-10-ボラアントラセン骨格を合成することに成功した。またこの前駆体の構造について研究を行い、ホウ素と窒素を含む共役系ブロックであること、また環外二重結合の寄与により平面の共役系ではなく、バタフライ型に共役系が折れ曲がった構造をしていることが明らかとなった。またその光物性について研究を行い、このホウ素と窒素を含むアントラセン骨格は蛍光性の共役系であることを明らかにした。またこの骨格を用いた高分子化についても予備的な検討を行った。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
提案した研究計画では、本研究で元素ブロックと位置づけるナフタレンの1,4-位およびアントラセンの9,10位に窒素とホウ素を導入した1-アザ-4-ボラナフタレンおよび9-アザ-10-ボラアントラセンの前駆体を合成を遂行する予定であった。具体的にはルイス塩基の配位により安定化された元素ブロック前駆体の合成を計画していた。この研究計画に従い、ビス(2-ブロモフェニル)アミンを出発原料として種々の合成検討を行ったが、目的の前駆体であるルイス塩基配位1-アザ-4-ボラナフタレンおよび9-アザ-10-ボラアントラセンの合成には至っていない。しかし、この合成検討の結果としてジクロロボリル基とクロロ基が置換した9-アザ-10-ボラアントラセンの合成を達成した。この化合物は三塩化ホウ素の脱離により、目的の元素ブロック9-アザ-10-ボラアントラセンを発生させることができると考えられるため、この化合物を前駆体としても研究計画の次段階である高分子化の検討が可能である。従って研究目的を達成するうえでの支障はきたさないと考えられる。また初年度にはルイス塩基で安定化された元素ブロック前駆体の合成に続いて、ルイス塩基の脱離による高分子化の検討を行う予定であった。この高分子化についても、ジクロロボリル基とクロロ基が置換した9-アザ-10-ボラアントラセンを用いて検討を行っている最中である。また得られた前駆体が官能基変換可能であることを利用して、この前駆体からの有機リチウム試薬を用いた段階的なオリゴマー化の検討も進行中である。計画に若干の変更および遅れが見られるものの、十分な研究の進展は見られている。
|
今後の研究の推進方策 |
提案した研究計画では、初年度に元素ブロック9-アザ-10-ボラアントラセンの前駆体の合成を行い、そのオリゴマー化について検討することとなっていた。また次年度には得られた元素ブロックオリゴマーの知見を発展させ、高分子量のポリマー化およびその酸化的環化反応について研究を行う計画であった。これまでの実績として元素ブロック前駆体の合成を行っており、そのオリゴマー化および高分子化について検討を行っている段階である。従って若干の計画の遅れを考慮した上で当初の研究計画通りに今後も研究を推進する。 具体的にはこれまでの成果として得られている元素ブロック前駆体、ジクロロボリル基とクロロ基が置換した9-アザ-10-ボラアントラセンを用いた高分子化について引き続き検討を行う。この検討により元素ブロック高分子を合成する。またこれまでに得られた9-アザ-10-ボラアントラセンは官能基変換可能なジクロロボリル基とクロロ基が置換している。この置換基を脱離能の高い置換基へと変更することでより容易に元素ブロック9-アザ-10-ボラアントラセンを発生させることができると考えられる。またこれまでの合成検討により蓄積された知見をもとに当初の計画であったルイス塩基により安定化された元素ブロック前駆体の合成も引き続き検討を行う。これらの合成経路についても検討を行い、多方面からのアプローチをもって元素ブロック高分子の合成を行う方策である。どのアプローチからでも目的の元素ブロック高分子の合成が達成可能であり、元素ブロック高分子が得られしだい、当初の研究計画の次段階である元素ブロック高分子の一次元シート化について研究を行う。また得られる共役系化合物の物性評価を行うこととする。
|