ホウ素窒素含有シート状高分子の合成に向けて、前駆体となりえるジクロロボリル基置換9-アザ-10-ボラアントラセンの合成を行った。この化合物の単結晶X線構造解析を行い、アントラセン型の共役系ではなく、環外のホウ素置換基と窒素間の二重結合性を有することを明らかにした。この化合物の分光学的特性についてもあわせて研究を行っている。また他のホウ素と窒素を含む共役系の合成についてもあわせて研究を行った。種々の共役系骨格について検討を行った結果、新規なホウ素窒素置換アセチレンの合成に成功した。この構造について赤外分光法、単結晶X線結晶構造解析および理論計算によりアセチレンを介したボリル基-アミノ基間のpush-pull型の相互作用について考察を行った。その結果、ホウ素―アセチレン間および窒素―アセチレン間に二重結合性を持ち、アセチレンの三重結合性が低下したブタトリエン型構造の寄与が強いことを初めて明らかにした。またピナコラートボリル基とアミノ基を有するアセチレンの二量化反応について研究を行い、ホウ素窒素置換シクロブタジエンを配位子とするコバルト錯体の合成を行った。この錯体からの酸触媒存在下での配位子置換反応により、ホウ素と窒素が置換したシクロブタジエンを合成することに初めて成功した。このシクロブタジエンの構造について単結晶X線結晶構造解析および理論計算により考察を行い、窒素置換基とシクロブタジエン間に二重結合性を持ちホウ素が置換した炭素上に負電荷が局在化したひし形の構造であることを明らかにした。またこのシクロブタジエンの反応性について研究を行ったところ、一般的な有機ホウ素化合物と異なり、このシクロブタジエンの炭素―ホウ素結合が水との反応により容易に切断されることがわかった。これはシクロブタジエン上の官能基変換につながる成果である。
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