公募研究
新学術領域研究(研究領域提案型)
ナノテクノロジーの進展に伴い、安定かつ高機能なナノ物質の創製が切望されている。チオラート保護金クラスター(Aun(SR)m)は、サイズ特異的な物性や機能を示すことから新しい機能性材料の構成単位として期待されている。我々のグループでは、こうしたAun(SR)mクラスターを他元素や機能性配位子と複合化させることで、高機能なナノ物質を創製することに取り組んでいる。TeはSとSeと同様にカルコゲン(16族元素)に属しており、それらより重い元素である。こうした元素を結合部位に持つテルロラート(TeR)を配位子に用いると、Aun(SR)mクラスターよりも、金コアと配位子間の伝導性の高いクラスターが創製されることが以前より指摘されている。こうした高い伝導性は、これら金クラスターを基盤とした分子電子素子創製の上で重要であり、このことから近年になり、Aun(TeR)mナノ粒子に関していくつかの研究が報告されている。しかしながら、それらのナノ粒子ではテルロラートの酸化を完全に防ぐことは困難であり、報告されている金ナノ粒子は多くの場合、OTeRに覆われている。テルロラート保護が金クラスターの構造や物性に与える影響を明らかにするためには、未酸化のテルロラートに保護された金クラスターを対象に研究を行うことが不可欠である。今回我々は、TeR保護Au25クラスターの合成に取り組み、その結果、未酸化のフェニルテルロラート(TePh) をリガンドシェルに含む[Au25(TePh)n(SC8H17)18-n]-(n = 1-18)の合成に成功した。合成されたクラスターに対する実験及び関連クラスターに関する理論計算より、テルロラート保護は、Au25クラスターのAu13コアを歪ませる(膨張させる)こと、クラスターのHOMO-LUMOギャップを減少させることが明らかになった。
2: おおむね順調に進展している
本研究課題では、魔法数金クラスターを高機能化させることで高機能な無機元素ブロックを創製することを主目的としている。初年度は機能性配位子との複合化を予定しており、実際に他のカルコゲナートと複合化したクラスターの創製に成功した。このことから、現在までの達成度を「おおむね順調に進展している」と自己評価した。
アゾベンゼンは光照射によりその構造を変化させる。一方、魔法数Aun(SR)mクラスターは周りを覆う保護チオラートの構造に依存して、フォトルミネッセンスの発光波長や量子収率が変化することが明らかにされている。次年度は、これら二つの特徴に着目し、アゾベンゼンチオラート保護魔法数Aun(SR)mクラスター(Au25(SRphoto.)18)を精密合成し、発光波長に光応答性を有するクラスターを創製する。こうした研究において、アゾベンゼンチオールについては、既に、いくつかの合成法確立に成功している。そこで、そうした合成法を駆使してAu25(SRphoto.)18を精密に合成した後、そのフォトルミネッセンスの光応答挙動を測定する。光異性化に関しては、Au25(SRsti.)18を溶媒に溶解させ、そこに紫外光を照射することで、アゾベンゼンチオラートをトランス体からシス体へと異性化させる。またその溶液に、可視光を照射することでシス体からトランス体へと異性化させる。配位子の光異性化はNMR測定及びIR測定により確認する。以上の測定を、アゾベンゼンチオラートの構造を変化させながら測定を行うことで、発光波長を大きく変化(スイッチ)させる配位子を特定し、発光波長に光応答性を有するクラスターの創製を実現する。
すべて 2014 2013
すべて 雑誌論文 (9件) (うち査読あり 9件) 学会発表 (9件) (うち招待講演 9件)
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