研究領域 | 元素ブロック高分子材料の創出 |
研究課題/領域番号 |
25102541
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研究種目 |
新学術領域研究(研究領域提案型)
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
須賀 健雄 早稲田大学, 高等研究所, 助教 (10409659)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 気相重合 / 共役高分子 / 酸化重合 / 有機半導体 / チオフェン / 元素 / 有機薄膜太陽電池 / 有機デバイス |
研究概要 |
配向性高い共役高分子をその場(in-situ)形成できる「気相酸化重合」に着目し、各種元素(Si, Seなど)を含む低バンドギャップ・移動度高い高分子半導体の新しい形成法としての確立を目的とする。本年度は、従来とは逆の着想で「共役モノマーを予め塗布、揮発性の酸化剤を気相供給する」ことで揮発性や熱安定性に制限されていた多様な共役モノマー、特に各種元素(Se, Siなど)含有共役モノマーへ対象を拡げ、気相重合を適用するとともに、ドナー/アクセプター混合型光電変換層に向けた配向性高い高分子半導体の新しい形成法として提示した。 (1) 気相酸化剤を用いたオリゴチオフェンの気相酸化重合 ターチオフェン溶液を基板上に予め成膜後、化学酸化剤としてNOPF6またはI2蒸気雰囲気下で気相重合した。エタノールによる洗浄、ヒドラジンによる脱ドープを経て、無置換ポリチオフェンを各種有機溶媒に不溶な赤色薄膜として得た。I2を酸化剤とした場合、UV-vis-NIRスペクトルでは長波長側に光吸収の肩ピークが現れ、共役長の伸長および高い秩序性が示唆された。XPSスペクトルでは、I由来のピークがエタノール洗浄により消失し、NOPF6より酸化剤の除去が容易であった。 (2) 元素ブロック共役モノマーの拡張と気相重合 元素ブロック含有モノマーとして、セレノフェンおよびBODIPY誘導体を選択した。セレノフェンは酸化電位が高いため、ビセレノフェンへと誘導し、BODIPY誘導体では末端にチオフェンを導入して気相酸化重合に供した。気相重合により得られた共役高分子のMALDI-TOF MSより、分子量3000, 重合度10-20のピークを検出し、各モノマーの繰り返しと一致したことから、副反応なく重合体を与えることを明らかにした。また、気相重合により得られた薄膜は溶液重合よりも1桁高いホール移動度を示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度に計画した、気相酸化剤としてヨウ素を用いた気相重合法を確立済みである。これにより、モノマーを気相から供給するのではなく、予め基材に塗布し、酸化剤を気相(蒸気)として供給できるため、熱安定性や揮発性により制限されていたモノマーを大きく拡張できる。例としてSe, Bを含有する元素ブロックモノマーへ対象を拡張した。また、不溶化し、分子量すら評価できていなかった「無置換」共役高分子について、MALDI-TOF法を適用し、気相重合では副反応なく高分子量体を形成できることをはじめて実証した。 また、新学術領域計画班・公募班の研究者との共同研究も開始した。A02班高分子化制御の視点から、各元素ブロック共役モノマーをその場重合を検討している。
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今後の研究の推進方策 |
気相酸化重合により得られた共役高分子薄膜は、高いホール移動度を示すなど、他の溶液重合法に比べ利点を有しているが、気相重合で形成される高次構造と有機半導体物性の相関についてはまだ詳細をわかっていない。本年度は、米・国立標準技術局Soles博士らと小角X線散乱、電顕等の共同実験を計画している。また、有機薄膜太陽電池のドナー・アクセプター活性層として適用し、有機半導体特性と相関づける。 新学術領域内共同研究を積極的に行う予定である。例としては(1)Te, Si含有縮環型共役モノマーの気相重合、(2)高分子微粒子の局所電流-電圧特性評価、(3)Metal-Organic Framework (MOF)空間内を利用した共役分子の気相重合、などである。
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