研究領域 | 元素ブロック高分子材料の創出 |
研究課題/領域番号 |
25102543
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研究種目 |
新学術領域研究(研究領域提案型)
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研究機関 | 関西大学 |
研究代表者 |
宮田 隆志 関西大学, 化学生命工学部, 教授 (50239414)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 元素ブロック高分子 / 動的架橋 / 光応答性 / 表面パターニング / 表面物性 / 金ナノ粒子 / 光二量化 / ポリジメチルシロキサン |
研究概要 |
本研究では,表面パターニングできる光応答性元素ブロック高分子材料の創出を試み,本年度は以下のような研究成果が得られた。 (i) 光応答性元素ブロック高分子の合成:光応答性元素ブロック高分子を合成するため,光応答性の元素ブロックとしての光二量化基含有モノマー(桂皮酸ビニル(VCi))と柔軟な分子鎖をもつ元素ブロックとしてのポリジメチルシロキサン(PDMS)マクロモノマーとを共重合することにより,光応答性元素ブロック高分子を合成した。その際,重合条件を変化させ,様々な共重合組成の光応答性元素ブロック高分子を合成した。さらに,合成した共重合体に光照射した際のUV-Visスペクトル変化を調べ,合成した光応答性グラフト共重合が光二量化することが明らかとなった。 (ii) 光応答性元素ブロック高分子材料の表面パターニング特性の検討:(i)で合成した光応答性元素ブロック高分子を溶媒に溶解させ,スピンコート法によって基板上に薄膜形成させた。そのときのスピンコート条件と膜厚との関係を調べ,表面パターニングに最適な薄膜を調製した。この薄膜に所定波長の光を照射したところ,照射時間の増加に伴って膜厚が次第に減少することが明らかになった。 (iii) 光応答性元素ブロック高分子材料への金属元素ブロックの導入:光応答性元素ブロック高分子材料に金属元素ブロックとして金ナノ粒子(AuNP)を分散させるために,まずAuNPの表面改質を行った。得られた表面疎水化AuNPを光応答性元素ブロック高分子薄膜に均一分散させる条件を明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
光応答性元素ブロック高分子の合成に時間がかかると予想されたが,光二量化基含有モノマーとPDMSマクロモノマーとを重合することによって比較的容易に光応答性元素ブロック高分子を合成することができた。その結果として,光応答性元素ブロック高分子の光二量化反応を調べることができ,さらに薄膜を調製することもできた。さらに,UV照射によって光二量化反応が進行し,薄膜の膜厚も次第に減少するというユニークな挙動を見出すことができた。一方,通常は水中で調製されるAuNPを有機溶媒中で調製し,表面疎水化も順調に進み,光応答性元素ブロック高分子に分散させることにも成功した。このように,新しい光応答性元素ブロック高分子の合成に成功し,その応用挙動やAuNPの分散などに成功しているため,当初の計画以上に進展していると評価した。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度は,引き続き,桂皮酸およびクマリンを光二量化基とする光応答性元素ブロック高分子の合成を行い,その表面パターニング特性について検討する。特に,フォトマスクを用いた光照射によって表面に形成されるパターン構造を詳細に調べる。その際に,光照射時間とフィルム構造との関係を検討し,光応答性架橋形成に基づく表面パターニング現象を解明する。また,光応答性元素ブロック高分子の構造を制御することにより,高感度で素早く表面パターニングできる材料の開発を目指す。 また,平成25年度と同様にAuNPを表面改質した後,光応答性元素ブロック高分子に均一分散させる方法を検討する。その後,光照射前後のUV-Visスペクトル測定およびAFMやSEMを用いた構造観察により,光照射前後のAuNPの分散状態を評価する。その結果に基づき,光照射による体積変化に伴ってAuNP間距離が短くなり,光物性や電気物性などが変化するように,AuNP分散状態をパーコレーション転移の閾値近傍に構造設計する。これらの表面パターニング特性を利用した光記録材料や表示素子,電子デバイスへの応用の可能性についても検討する。
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