本申請課題では、柔軟な相互作用を生み出す舞台として、両親媒性ブロックオリゴマーによる金属錯体の組織化を用いた配列構造制御に着目した。このような手法から、金属錯体の配列構造・物性を多様に制御することによって、固体結晶化学には全く見出されていない、金属錯体の新しい高分子的自己組織化技術の創出と特異的物性の発現を目指した。このような現象を基礎知見ととらえ、より多彩な情報伝達システム(スピンコミュニケーション)へ発展することを期待している。今年度は以下のものを取り組んだ。 ・自己集合体の磁性揺らぎの評価 スピン平衡性のCo(II)金属錯体を用いたオリゴマー集合体を形成した。この集合体は、オリゴマーのアロステリックな集合構造転移に基づき、単核錯体にはない逆スピン転移現象をSQUIDによって評価した。さらに、複合体の局所構造を透過型電子顕微鏡にて評価した。このことから、ポリペプチド-Co(II)錯体の室温付近における完全な逆スピン転移現象と構造の両面から相互的に評価した。 ・ナノ結晶を用いた新しい分子集合体配列技術の創出 上記までに得られた自己集合性高分子化金属錯体を、溶媒変化によって基板上に配列固定化する手法を開拓した。基板の状態、方向、パターンを制御することによって、自己組織体の配列方向を制御し、新しいナノ結晶配列構造を形成した。このことによって、多彩な条件からもたらされる新しい分子整列状態を形成し、金属錯体間の逆スピン転移現象を制御した。 以上のことから新しい有機無機融合材料というべき物質群を形成し、磁性材料としての新しいパラダイム創成が期待できる。
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