• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2013 年度 実績報告書

トワイマン効果を用いたバルクナノメタルの残留応力・ひずみの評価とその制御

公募研究

研究領域バルクナノメタル ー常識を覆す新しい構造材料の科学
研究課題/領域番号 25102701
研究種目

新学術領域研究(研究領域提案型)

研究機関弘前大学

研究代表者

佐藤 裕之  弘前大学, 理工学研究科, 教授 (10225998)

研究期間 (年度) 2013-04-01 – 2015-03-31
キーワード構造材料 / 開放応力 / 超微粒子 / 応力テンソル / 2D-XRD / 寿命予測 / クリープ / 長時間強度
研究概要

本年度は下記の項目について検討し知見を得た。
(1)バルクナノメタルの残留応力の評価方法の検討:加工に伴う残留応力の開放によって生じるひずみをひずみゲージ法によって計測し,マクロスケールで測定される残留応力と残留ひずみを評価する方法を検討した。ひずみと応力の換算には弾性定数に関する情報が必要であり,弾性率測定装置を購入して使用した。弾性率の測定には,所定の長さ・形状の試験材が必要であり,バルクナノメタルのように大型の試験片を得にくい場合には測定方法をさらに検討する必要がある。また,バルクナノメタルの結晶粒微細化のために施された強加工の方向と残留応力の関係を整理するために,2D-XRD法による残留応力テンソルの測定を試み,主応力の方向と加工方向の関係を調査した。その際,計画班の研究者から試料の提供を受けた。(2)バルクナノメタルの残留応力の低減条件の探索:異なる条件で熱処理を施したバルクナノメタルの残留応力を評価し,バルクナノメタルの微細結晶粒と優れた力学特性を損なうことなく残留応力を低減させるための条件を探索するために,電気炉を改良し,基本的な実験の準備を行った。(3)残留応力と材料学的組織の関係の調査:残留応力の変化と材料学的組織の変化の関係を実験的に調べ検討するために,各種の顕微鏡による組織観察を試みた。
また,(4)アークプラズマ法による超微粒子とその焼結体の硬度およびクリープ変形特性についても検討を行ない,通常の粉体を用いた焼結体に比べて高い硬度を有する焼結体を得た。他に,(5)通常の結晶材・合金や,組織勾配を有する結晶材料の強度特性を実験的に検討し,高温強度・クリープ曲線の外挿・寿命予測法についても検討した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本研究は,微細構造部品の構造材料として期待されるバルクナノメタルの,残留応力の解放による変形の様相を調べ,残留応力が加工精度におよぼす影響を低減するためのプロセスを模索し,バルクナノメタルを,新しい高精度微細構造用材料として応用・展開するための基礎的知見を材料工学の立場から提案することを目的としている。
本年度は,(1)バルクナノメタルの残留応力の評価方法の検討,(2)バルクナノメタルの残留応力の低減条件の探索,(3)残留応力と材料学的組織の関係の調査,を基本的項目として実験・検討を行うこととし,(1)については,ひずみゲージを用いる解法応力の評価方法を検討したほか,2D-XRD法による残留応力テンソルの評価方法についても検討した。(2)については,実験装置を改良し,実験の準備を進めており,翌年度に実験を行うための基本的な準備を行った。(3)については,各種顕微鏡による観察を行った他,他研究機関にも観察の依頼を準備している。また,超微粒子の作成とその焼結による微細組織材の特性を明らかにしてきた。これらの他,バルクナノメタルの回復に伴って作られると予測される組織勾配と強度特性の関係を検討するための前段階として,通常の大きさの粒径を持つ組織勾配材の作成条件とその強度特性を明らかにしたほか,高温強度特性の外挿方法や寿命予測法についても検討を行っている。
これらを総合的に勘案し,研究はおおむね順調に進展していると考えている。

今後の研究の推進方策

本研究は,微細構造部品の構造材料として期待されるバルクナノメタルの,残留応力の解放による変形の様相を調べ,残留応力が加工精度におよぼす影響を低減するためのプロセスを模索し,バルクナノメタルを,新しい高精度微細構造用材料として応用・展開するための基礎的知見を材料工学の立場から提案することを目的としており,翌年度は引き続き次の項目について検討を行う。
(1)バルクナノメタルの残留応力の評価方法の検討:ひずみゲージ法や2D-XRD法に加えて,トワイマン効果と関連する勾配を有する加工ひずみの導入にともなう変形・ひずみの評価,およびそれらに基づく応力の評価方法について検討する。2D-XRD法については,できるだけ多様な条件での測定を試みることができるよう努める。(2)バルクナノメタルの残留応力の低減条件の探索:熱処理を施したバルクナノメタルの残留応力を評価し,バルクナノメタルの微細結晶粒と優れた力学特性を損なうことなく残留応力を低減させるための条件を探索する。(3)残留応力と材料学的組織の関係の調査:残留応力の変化と材料学的組織の変化の関係を実験的に調べ検討するために,各種の顕微鏡による組織観察を試みる。
また,バルクナノメタルの多様な特性を明らかにし検討するための礎を得るために,(4)アークプラズマ法による超微粒子の作製を行い,その焼結体の強度を評価する。また,(5)組織勾配材の作成方法とその強度特性についても検討する。

  • 研究成果

    (22件)

すべて 2014 2013 その他

すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 6件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (15件) (うち招待講演 5件) 産業財産権 (1件)

  • [雑誌論文] Extrapolation of Sigmoidal Creep Curve by Strain Acceleration Parameter2014

    • 著者名/発表者名
      Hiroyuki Sato, Kosuke Omote, Akira Sato, Kouki Ueno
    • 雑誌名

      Key Engineering Materials

      巻: 592-593 ページ: 606-609

    • DOI

      10.4028/www.scientific.net/KEM.592-593.606

    • 査読あり / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] Formation of Microstructural Gradient of AA2017 by RBT at Ambient Temperature2014

    • 著者名/発表者名
      Kouki Ueno, Akira Sato and Hiroyuki Sato
    • 雑誌名

      Materials Science Forum

      巻: 794-796 ページ: 1233-1238

    • DOI

      10.4028/www.scientific.net/MSF.794-796.1233

    • 査読あり / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] Distribution of residual stresses in 1070 single phase aluminum with grain size gradient formed by RBT treatment2014

    • 著者名/発表者名
      Y. Enomoto, T. Nishimura, H. Sato and S.-I. Tanaka
    • 雑誌名

      Materials Science Forum

      巻: 768-769 ページ: 343-350

    • DOI

      0.4028/www.scientific.net/MSF.768-769.343

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Comparison of internal and residual stresses measured by strain-dip test and XRD during high temperature deformation of Al-Mg solid solutions2014

    • 著者名/発表者名
      H. Sato, Y. Enomoto, K. Omote, and S.-I. Tanaka
    • 雑誌名

      Materials Science Forum

      巻: 768-769 ページ: 351-357

    • DOI

      10.4028/www.scientific.net/MSF.768-769.351

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Extrapolation of Creep Curve and Creep Rate by Strain Acceleration Parameter in Al-Mg Solid Solution Alloys2014

    • 著者名/発表者名
      Hiroyuki Sato, Kosuke Omote, and Akira Sato
    • 雑誌名

      Materials Science Forum

      巻: 未定 ページ: 未定

    • 査読あり
  • [雑誌論文] 佐藤 麗, 表 晧介, 前田 悠太郎, 佐藤 裕之2014

    • 著者名/発表者名
      ひずみ加速指数によるCu-Al固溶体のクリープ曲線の区間評価
    • 雑誌名

      銅と銅合金

      巻: 未定 ページ: 未定

    • 査読あり
  • [学会発表] Evaluation of strain rate change during creep in sinter of ultrafine particles made by arc plasma method2013

    • 著者名/発表者名
      ○Hiroyuki Sato, Kosuke Omote, Akira Sato, Kouki Ueno
    • 学会等名
      International conference on Processing & manufacturing of advanced materials (Processing, Fabrication, Properties, Application, THERMEC2013)
    • 発表場所
      Las Vegas, NV, USA
    • 年月日
      20131202-20131206
    • 招待講演
  • [学会発表] ひずみ加速指数の評価によるクリープ曲線の新しい区間分類の提案2013

    • 著者名/発表者名
      ○佐藤 裕之、佐藤 麗、 表 皓介
    • 学会等名
      日本金属学会2013年秋期講演大会(第153回)
    • 発表場所
      金沢大学
    • 年月日
      20130917-20130919
  • [学会発表] RBT処理による2017合金の高温クリープ強度と室温強度の同時改善2013

    • 著者名/発表者名
      ○上野 功樹、佐藤 麗、佐藤 裕之
    • 学会等名
      日本金属学会2013年秋期講演大会(第153回)
    • 発表場所
      金沢大学
    • 年月日
      20130917-20130919
  • [学会発表] RBTにより組織勾配を形成したAl合金の高温強度2013

    • 著者名/発表者名
      ○上野 功樹、佐藤 麗、佐藤 裕之
    • 学会等名
      日本金属学会高温強度と組織形成の材料科学研究会
    • 発表場所
      宮城県刈田郡
    • 年月日
      20130829-20130831
  • [学会発表] ひずみ加速指数によるクリープ曲線の比較2013

    • 著者名/発表者名
      ○佐藤 麗、表 皓介、佐藤 裕之
    • 学会等名
      日本金属学会高温強度と組織形成の材料科学研究会
    • 発表場所
      宮城県刈田郡
    • 年月日
      20130829-20130831
  • [学会発表] Extrapolation of Sigmoidal Creep Curve by Strain Acceleration Parameter2013

    • 著者名/発表者名
      ○Hiroyuki Sato, Kosuke Omote, Akira Sato, and Kouki Ueno
    • 学会等名
      Seventh International Conference on MATERIALS STRUCTURE & MICRO MECHANICS OF FRACTURE (MSMF7)
    • 発表場所
      Brno, Czech Republic
    • 年月日
      20130701-20130703
  • [学会発表] ひずみ加速指数によるクリープ曲線の区間評価2013

    • 著者名/発表者名
      ○佐藤 裕之、佐藤 麗
    • 学会等名
      日本銅学会第53回講演大会
    • 発表場所
      関西大学
    • 年月日
      20130515-20130517
  • [学会発表] トワイマン効果を用いたバルクナノメタルの残留応力・ひずみの評価とその制御

    • 著者名/発表者名
      佐藤 裕之
    • 学会等名
      H25年度 バルクナノメタル 第一回全体研究会
    • 発表場所
      キャンパスプラザ京都
  • [学会発表] ひずみ加速指数によるクリープ曲線の定量評価とクリープ曲線の外挿法の提案

    • 著者名/発表者名
      ○佐藤 裕之,表 晧介,上野 功樹,佐藤 麗
    • 学会等名
      日本金属学会春期講演大会(2014)
    • 発表場所
      東京工業大学
  • [学会発表] 遷移クリープが明瞭に現れるクリープ曲線の外挿方法の比較

    • 著者名/発表者名
      ○佐藤 麗, 表 皓介,上野 功樹,佐藤 裕之
    • 学会等名
      日本金属学会春期講演大会(2014)
    • 発表場所
      東京工業大学
  • [学会発表] アルミニウム合金のマクロ組織に及ぼすRBT処理の影響

    • 著者名/発表者名
      ○上野功樹, 佐藤麗,佐藤裕之
    • 学会等名
      日本金属学会春期講演大会(2014)
    • 発表場所
      東京工業大学
  • [学会発表] Proposal of new extrapolation method of creep curve by Strain-Acceleration- Parameter

    • 著者名/発表者名
      Hiroyuki Sato
    • 学会等名
      Omega Method Workshop
    • 発表場所
      東京都千代田区
    • 招待講演
  • [学会発表] ひずみ速度のひずみ依存性の評価に基づくクリープ曲線の外挿

    • 著者名/発表者名
      佐藤 裕之
    • 学会等名
      金属材料の高温変形と耐熱特性講演会
    • 発表場所
      仙台市青葉区
    • 招待講演
  • [学会発表] 高温クリープ現象と内部応力との関係 材料特性発現因子としての多様な微視的ひずみ場の解明-2

    • 著者名/発表者名
      佐藤 裕之
    • 学会等名
      日本鉄鋼協会 評価・分析・解析部会 合同研究会
    • 発表場所
      仙台市青葉区
    • 招待講演
  • [学会発表] ひずみ加速指数によるクリープ曲線の形状評価と寿命予測法の提案

    • 著者名/発表者名
      佐藤 裕之
    • 学会等名
      日本材料学会 第62期第2回 高温強度部門委員会
    • 発表場所
      東京都千代田区
    • 招待講演
  • [産業財産権] 超微細Al合金粉末および高強度Al合金成形体の製造方法、ならびに超微細Al合金粉末および高強度Al合金成形体2013

    • 発明者名
      国立大学法人弘前大学、カミテック株式会社
    • 権利者名
      国立大学法人弘前大学、カミテック株式会社
    • 産業財産権種類
      特許
    • 産業財産権番号
      2013-238615
    • 出願年月日
      2013-11-19

URL: 

公開日: 2015-05-28  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi