研究領域 | バルクナノメタル ー常識を覆す新しい構造材料の科学 |
研究課題/領域番号 |
25102703
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研究種目 |
新学術領域研究(研究領域提案型)
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
佐藤 和久 東北大学, 金属材料研究所, 助教 (70314424)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | バルクナノメタル / トモグラフィ / 3次元構造 / 低歪速度 / 変形過程 |
研究概要 |
本年度は、超微細粒から成る工業用純Al(領域代表者より提供)を用いて、電子線トモグラフィによる3次元組織観察を行い、連続傾斜像撮像時の観察条件や電顕観察試料作製手法について種々検討を行った。まず、電解研磨試料を用いて組織観察を行ったところ、圧延方向に伸長したラメラ組織が明瞭なコントラストとともに観察された。試料傾斜とともに、結晶粒のコントラストが変化し、また、ラメラ内に転位のコントラストが部分的に観察されたが、これらはいずれも試料傾斜に伴う回折条件の変化に起因する。重み付き逆投影法(WBP)を用いて3次元再構築したところ、やや不明瞭ながらも伸長したラメラ組織が再構築された。60°傾斜により、投影されるラメラ幅(短軸)が約100nm程度まで縮小されることから、高角での良好な像質の確保には傾斜方向の選択(傾斜軸とラメラ組織との角度)が重要な因子と言える。続いて、超微細粒内での転位に着目した観察を試みたところ、回折条件が約100-200nm間隔で大きく変化することから、一定の回折条件を保持しつつ超微細粒材料を連続的に傾斜するためには、試料(視野)の選択とともに特に精密な試料位置・入射軸調整が必要であることが判明した。また、FIB加工はAl超微細粒からのマイクロサンプリングには適さないことが判明した。さらに上記研究と平行して、本年度は連携研究者・研究協力者らとともに、新規再構築ソフトウェアの開発ならびに試料一軸高傾斜対応その場引張試験ホルダーの新規開発に取り組み、試料変形機構部分のプロトタイプデザインを完了した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年度は工業用純Al超微細粒組織を用いて、3次元観察に適した電子顕微鏡試料作製手法の検討と実際の連続傾斜像観察を行うとともに、連携研究者・研究協力者らと連携して新規再構成ソフトウェアの開発、新規に開発する試料一軸高傾斜対応その場引張試験ホルダーの開発に取り組んだ。これらはいずれも一定の進捗があり、超微細粒組織における連続傾斜像観察におけるノウハウを蓄積することができた。一方で、転位組織の3次元観察に欠かせない、試料連続傾斜中に回折条件を一定に保持するための試料(視野)探索が喫緊の課題であり、試料配置・入射軸調整と合わせて次年度において早急な解決が必要と考えている。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、引き続き超微細粒組織における結晶粒形状と転位組織の3次元観察を進める。試料連続傾斜中の回折条件の保持が課題であり、3次元観察により適した結晶粒径・形状の探索とともに対称傾角粒界や双結晶の利用を検討する。これら試料を用いて、新規開発ホルダー試作機によるその場引張試験と連続傾斜像取得を行い、新規再構築ソフトウェアを用いて3次元再構築する(4次元トモグラフィの実現)。この新規手法を用いて、バルクナノメタル変形過程の直接観察に取り組み、低歪速度下での塑性変形時の結晶粒形状の変化、転位の運動、転位ー粒界相互作用の解明を通して、塑性変形に寄与しうる最小の結晶粒サイズと塑性変形における結晶粒界や転位の果たす役割について知見を得る。次年度も連携研究者・研究協力者と緊密に連携を図りながら、特に、新規開発ホルダーを用いたデータ取得に重点的に取り組みたい。
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