1. 試料一軸高傾斜対応その場引張試験ホルダーの開発 前年度から開発を進めてきた新規高傾斜対応その場引張試験ホルダーのプロトタイプ機が完成した。TEM内での試料一軸高傾斜とその場引張変形を両立させるため、従来にないカートリッジ式試料台座を採用、アクチュエーターの進行方向と引張応力印加方向が直交、の2点が既存の引張ホルダーとの大きな相違点である。アクチュエーターの駆動速度とカートリッジ式試料台座の変形速度が3:1となるよう設計されており、これにより低歪速度での引張変形を実現した(最小値約1.5×10-6 s-1)。試料形状の制約は少なく、標準的な直径3mmφの円板状試料をはじめ、約1 mm×3 mmサイズの短冊状試料も取り付け可能である。 2. 実試料を用いたホルダー動作の検証 工業用純Al ARB材短冊状試験片(1 mm × 3 mm)の中心部を電解研磨により薄片化した後、熱硬化性樹脂を用いて試料台座に固定した。アクチュエーターを前進させ、試験片長手(圧延方向)に引張応力を印加したところ、やがて試験片が破断した。同様の引張試験を繰り返した結果、引張応力は設計通りにホルダー長手軸(アクチュエーター進行方向)と直交方向に印加されることを確認した。続いて、破断箇所近傍での連続傾斜像観察を最大傾斜角60°、角度ステップ2°の条件で行った。その結果、高傾斜角においても十分な観察視野が確保されており、傾斜時の試料ドリフトや焦点外れは組織観察を行う上で無視しうる程度であることが判明した。 3. 新規再構成ソフトウェアの開発 圧縮センシング法は新しい3次元再構成法の1つであり、連携研究者(工藤)を中心として開発を進めてきたが、本年度、TV正則化法の計算量削減に成功し既存のソフトウェアへ実装、これにより大規模データセットから効率的かつ高精度に3次元再構成可能なプラットフォームが整った。
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