研究領域 | バルクナノメタル ー常識を覆す新しい構造材料の科学 |
研究課題/領域番号 |
25102704
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研究種目 |
新学術領域研究(研究領域提案型)
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
金 へよん 筑波大学, 数理物質系, 准教授 (20333841)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | バルクナノメタル / チタン合金 / 双晶 / マルテンサイト変態 |
研究概要 |
本年度には、準安定β 型Ti合金の冷間圧延によるナノ組織形成過程および集合組織変化を系統的に調べた。Ti合金バルクナノメタルの合金設計指針を確立するため、Ti-Zr-Nb、Ti-Zr-Nb-Sn合金など様々な合金系において、バルクナノ結晶化の条件、「①冷間圧延時に応力誘起マルテンサイト変態が起きる。②マルテンサイト相の軸比(b/a)が1.55 以上である。」が成り立つことを検証し、いずれの合金でも二つの条件を満たす組成では冷間圧延によりナノ結晶化が起きることを確認した。また、ナノ結晶化が発現した組成では、主に{113}<471>または{101}<151>の加工集合組織が形成されたが、98%以上の強圧延でもその強度は弱く、力学特性の異方性はなかった。バルクナノメタルの形成過程を解明するために、透過型電子顕微鏡を用い変形機構を調べた結果、応力誘起マルテンサイト相において複数の双晶系が活動していることが分かった。また、準安定β 型チタン合金の変形機構について調べ、β 型チタン合金特有の{332}<113>変形双晶はマルテンサイト相の{130}< 10>双晶に対応し、β相の格子変調により必要なshuffle量が小さくなることに起因することを明らかにした。Ti合金バルクナノメタルの熱処理による結晶粒成長および集合組織の変化を定量的に調べた。Ti合金バルクナノメタルの再結晶は非常に早く、圧延材では弱かった集合組織が再結晶の過程で強くなり、その主成分が変化することが分かった。結晶粒径が超弾性特性に及ぼす影響を調べた。結晶粒径の減少に伴い、マルテンサイト変態温度が低下し、マルテンサイト変態誘起応力は上昇したが、すべり変形応力も上昇し、高応力でも安定な超弾性が得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、準安定β型チタン合金バルクナノメタルの発現条件、集合組織の形成過程を明らかにし、超弾性特性、ヤング率、内部摩擦、制振特性など物性に及ぼす結晶粒径の影響を系統的・定量的に調べることを目的とした。本年度の研究により、冷間圧延によるナノ組織形成過程および集合組織変化を系統的に調べられ、発現条件の妥当性が検証された。また、熱処理による結晶粒成長および集合組織の変化を定量的に調べた。さらに、結晶粒径が超弾性特性に及ぼす影響を明らかにした。
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今後の研究の推進方策 |
加工・再結晶集合組織の形成に及ぼす添加元素および熱処理条件の影響を明らかにする。また、ヤング率、内部摩擦、制振特性など物性に及ぼす集合組織および結晶粒径の影響を系統的・定量的に調べる。さらに、準安定β型チタン合金のバルクナノメタル化の条件を満たすTi-Ta、Ti-Fe合金などを作製し、冷間圧延によってバルクナノ組織が得られるかを検証し、超弾性合金、低ヤング率・高強度合金の新たな材料設計指針を提案する。
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