研究実績の概要 |
本研究では、準安定β型チタン合金バルクナノメタルの集合組織の形成過程および超弾性特性、ヤング率、内部摩擦、制振特性など物性に及ぼす結晶粒径の影響を調べた。Ti-Zr-Nb合金系の他にTi-Zr-Mo系合金、Ti-Ta系合金、Ti-Nb-Fe系合金などを作製し、準安定β型チタン合金のバルクナノメタル化の発現条件「①冷間圧延時に応力誘起マルテンサイト変態が起きる。②マルテンサイト相の軸比(b/a)が1.55 以上である。」の妥当性を検証した。その結果、Ti-Zr-Mo系合金、Ti-Nb-Fe系合金においても、バルクナノメタル化の二つの条件を満たす組成では、冷間圧延によりナノ結晶化が起きることを確認した。圧延によってナノ結晶化した組成では合金系によらず、非常に弱い{113}<471> 加工集合組織を形成した。一方、再結晶の集合組織は熱処理温度や添加元素により変化することが分かった。また、バルクナノ結晶化に伴う内部摩擦および微小硬度の変化について調べた。硬度は双晶界面の導入およびナノ結晶化に伴い上昇し飽和する傾向を示した。圧延によりナノ結晶化が発現したTi-18Zr-15Nb合金の溶体化処理材(ST材)および各圧延材(10%, 30%, 50%, 70%, 90%, 98%)におけるtanδの温度依存性および歪み振幅依存性を調査した。マルテンサイト逆変態に起因するピークは、10%の圧延により大きくなるが、30%以上の圧延によりなくなることが分かった。また、圧延材において高温側で急激な動的緩和現象が確認できるが、それは圧延率の増加に伴い大きくなることが分かった。また、tanδは歪み振幅の増加に伴い大きくなる傾向を示すが、いずれの歪み振幅においても圧延率の増加に対して二つのピークを有するM字型のような特異な変化を示した。
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