(1)Ti-Ni合金のB19’Mの自己調整構造に及ぼす母相粒径の影響 研究に先立ちB19’Mの自己調整構造に及ぼす合金組成(Ni濃度)の影響を母相平均粒径20 μm程度の種々のTi-Ni合金を用いて調査した.等原子比組成(Ti-50 at.% Ni)合金では理想形状である6HPVS(晶癖面兄弟晶)クラスターを確認することができなかったが,Ni濃度の増加に伴いTi-51.0 at.% Ni合金では観察された自己調整構造の35%以上が6HPVsクラスターであった.この結果を基に等原子比組成合金における自己調整構造に及ぼす母相結晶粒径の影響を調べた.Ti-50.0 at.% Ni合金に加工と熱処理を施し,平均結晶粒径を0.4~7μm程度に制御した試料を作製した.これらについてEBSD法を用いた結晶方位解析とSEMによる表面起伏観察を行った.粒径1μm程度の母相粒において6HPVsクラスターの生成が確認され,自己調整構造の形態は合金組成のみならず母相結晶粒径にも依存することが明らかになった. (2)熱サイクルに及ぼす母相粒径の影響 平均粒径7μmと0.4μmの試料について熱サイクルによる順変態・逆変態を繰り返し,変態温度の変化を測定した.その結果,前者では20サイクル後に変態開始温度が約13 ℃低下したが,後者では約3 ℃の低下に抑制されていた.これは,結晶粒微細化によって熱サイクルに伴う転位の生成が阻害されたことと,理想形態に近い自己調整構造が形成されることで変態ひずみが軽減されたことによるものと考えられる.
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