研究実績の概要 |
本研究では,強ひずみ付与により多結晶組織が微細粒化へ至るプロセスを材料組織の有限要素解析手法を用いて再現することを試みた。 強ひずみによる微細粒化は結晶粒内の不均質変形とそれに伴う結晶方位回転によって生じるため,結晶粒内を十分な数の有限要素によって離散化する必要がある。そこで不均質変形場を再現するに最小数の結晶粒数の下,結晶粒内の要素分割に注力した周期多結晶組織の有限要素モデルを作成し,相当ひずみ100パーセント程度のマクロ純せん断ひずみを付与する数値シミュレーションを行った。このシミュレーションにおいて粒界と隣接粒の変位拘束の結果,単一粒が近い方位を持った塊状の複数の領域に分離するような結晶粒内の不均質変形が再現された。この際,結晶粒内の要素分割数のみを変化させたケーススタディによって,この種の数値解析では各結晶粒を2,000六面体要素以上で分割する必要があることを示した。 以上のように本研究の目的において,多結晶組織の形態および有限要素分割が不可欠であるため,ボロノイ分割を用いて周期多結晶組織の組織形態を発生させ,周期性を保持したまま有限要素分割を行うアプローチを開発した。ここで,結晶粒の頻度分布をポアソン分布またはガウス分布で表現し,これを重み関数としてボロノイ分割を行う。また,結晶粒のアスペクト比も制御できるように工夫した。さらに,有限要素分割では解像度を調整できる。 本研究において,微細粒化プロセスを有限要素解析で再現することは可能であるが,そのためには多大な計算コストを要することが知見として得られた。また,そのための有限要素モデルを作成するための労力も大きいため,多結晶組織の有限要素モデリング技術を開発した。この技術は汎用的であり,今後,様々な研究に展開できる。
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