研究概要 |
本研究では、二元系マグネシウム合金を用いて、溶質元素添加にともなう粒界塑性応答の変化について調査し、マグネシウム合金の延性改善に効果的な溶質元素選択の指針を明示することを最終目標としている。本年度では、以下の点が主な成果として挙げられる。 (i)五種類のマグネシウム二元合金(Mg-Ag, -Al, -Li, -Y, -Zn)を、重力鋳造により溶製し、溶体化処理後、温間押出加工により創製した。各合金の内部組織は、押出加工後、熱処理により調整した。SEM/EBSDおよびTEMを用いた初期組織観察から、各合金は、約10 μm程度の平均結晶粒サイズを有し、底面集合組織を形成するとともに、溶質元素が結晶粒界に偏析していることを確認した。 (ii)粒界塑性変形は、内部摩擦試験および高温引張試験により評価した。内部摩擦試験から得られる損失係数は、粒界すべりの発生に起因し、ある温度で急激に増加することを明らかにした。また、損失係数の変化(上昇)温度は、添加した溶質元素に影響を受け、Mg-Liは低温域、Mg-Yは高温域で起こることがわかった。引張試験でも同様の傾向が見られ、ひずみ速度感受性指数(m値)は、溶質元素の種類によって大きく変化し、Li添加はm値を増加、Y添加は低下させる働きがあることを確認した。 (iii)SEM/EBSDなどを用いた引張試験後の変形組織(表面形態)観察から、粒界すべりの発生を確認した。一方、粒界すべり量(変位)は、ひずみ付与にともない大きくなるが、その変位は、結晶粒界によって異なる傾向にあり、粒界構造の違いが、粒界すべりに影響を及ぼす要因の一つであることを明確にした。
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