研究領域 | バルクナノメタル ー常識を覆す新しい構造材料の科学 |
研究課題/領域番号 |
25102713
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研究種目 |
新学術領域研究(研究領域提案型)
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研究機関 | 株式会社豊田中央研究所 |
研究代表者 |
古田 忠彦 株式会社豊田中央研究所, 材料・プロセス1部 鉄鋼材料・プロセス研究室, 主任研究員 (40394506)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 超高強度 / 高延性 / 強度延性バランス |
研究概要 |
平成25年度では、①冷間加工に伴う組織変化をTransmission Electron Microscope (TEM) にて詳細に観察し、その冷間加工時の変形挙動を調査するとともに、冷間加工材の引張変形時のマクロ変形挙動をCCDカメラ用いて観察した。②さらに、High-pressure torsion (HPT) 加工を用い、ナノ結晶化した場合の強度-延性バランスの調査を行い、組織構造の影響についても調査した。③冷間加工によって形成された超微細粒の結晶方位情報については、ナノメガスを用いて方位解析することによって、その特徴を明らかにした。このように、新学術領域内での連携を積極的に行い、Fe-Ni-Al-C系合金の高強度-高延性発現メカニズムの解明に取り組んだ。 その結果、HPT 加工を6GPaにて10回転したFe-24.6Ni-5.8Al-0.44C (in mass%) 合金は、X-ray回折の結果から、HPT加工前後で相構成の変化は殆どなく、γ相を主体とするγ+α二相組織で構成されることが明らかになり、10回転後に約20nm程度の等軸なナノ結晶粒が認められ、Selected area diffractionパターンもリング形状を呈していることから、高傾角粒界で構成されたナノ結晶組織が得られた。HPT加工後に顕著な高強度化が認められ、降伏強度は、0.5回転で約1400MPa、1回転で約1800MPa、10回転では、約2100MPaに到達している。また、10回転の強加工後においても、約15%の均一伸びを有しており、HPT加工でナノ結晶粒が形成されているにも係わらず、優れた強度-延性バランスを示すことが明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
金属材料の常識を覆す特性が、強加工材したナノ結晶材でも得られることを実験的に明らかにした。また。引張試験後のTEMによる組織観察から、複数の変形機構が働いていることを示唆する結果が得られている。今後、これらの結果を詳細に解析することにより、高強度、高延性化に指導原理が得られる可能性がある。
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今後の研究の推進方策 |
26年度では、Fe-Ni系合金が有する弾性軟化方位と冷間加工によって形成される結晶方位や結晶回転との関係、ならびに冷間加工に伴う転位密度や双晶密度の変化、形成されたナノ組織の粒界構造、転位などの格子欠陥などをTEMで詳細に観察する。さらには、引張変形過程中の詳細な組織観察を実施し、冷間加工で形成されたナノ組織との関連を明らかにする。引張変形時の加工硬化挙動については、中性子によるその場測定を実施し、相応力や転位密度、双晶密度の変化などを測定して変形挙動を詳細に解析したい。
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