研究実績の概要 |
(1)ミリ波サブミリ波望遠鏡の高感度化へ向けた分光方式の基礎開発:ミリ波サブミリ波望遠鏡の感度を向上するために、電波受信系の周波数標準(局部発振器)を変調しながら高頻度で分光データをサンプルする受信システムを開発した。2013年度は、局部発振器の周波数変調制御を行うシステムの構築、国立天文台野辺山45mミリ波望遠鏡への搭載、および制御システムの改修を実施し、実証試験に成功した。この結果、既存の分光法と比較して約2倍の感度向上(4-5倍の観測効率向上)が可能であることを示した (田村他, 2013, 日本天文学会秋季年会; Tamura et al. 2013, ASP Conf. Series, 476, 401)。また、データ処理ソフトウェアの開発も推進し、大気輻射輸送モデルを用いて、大気放射と天体信号の分離が可能であることを検証した。
(2)サブミリ波カメラの搭載試験:ガンマ線バースト初期残光の観測に用いるサブミリ波カメラの試験観測とデータ評価に関する基礎的研究を行った。2013年12-1月および2014年3月にチリ共和国に設置された国立天文台アステ望遠鏡にてカメラの搭載試験を行い、ノイズ評価、光学系評価、解析手法の開発、銀河系内天体に対する試験観測を行った。ガンマ線バーストのアラートを受けた試験観測も行い、初期残光を観測するための手順を確立した。
(3)高赤方偏移の大質量星形成と活動銀河核の観測的研究:ガンマ線バーストは高赤方偏移の大質量星形成活動と関連が深い。今年度は、大型サブミリ波干渉計ALMAによる観測中に偶然同定された、遠方ミリ波輝線銀河とX線源対応天体の研究も実施した。多波長解析からは、本天体が爆発的星形成活動をともなう赤方偏移2.5の原始クェーサー候補天体であることがわかった (Tamura et al. 2014, ApJL, 781, L39)。
|