研究領域 | 重力波天体の多様な観測による宇宙物理学の新展開 |
研究課題/領域番号 |
25103508
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研究種目 |
新学術領域研究(研究領域提案型)
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
阿部 文雄 名古屋大学, 太陽地球環境研究所, 准教授 (80184224)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 宇宙物理 / 相対論 / 重力波 / 光学赤外線天文学 / ガンマ線バースト |
研究概要 |
本研究の目的は、近い将来スタートが予想される重力波の直接検出に備えてニュージーランド・マウントジョン天文台の1.8m望遠鏡や61cm望遠鏡による追観測の準備を行い、そのための試験観測を行うことである。 今年度は、老朽化して運用に問題のある61cm望遠鏡のコントロールシステムの更新を別予算で実施した。新システムは、順調に稼働しており、今後長期に渡って観測に使用できる。また、61cm望遠鏡に取付ける2-3色同時に観測可能な新しいカメラの製作を行った。このカメラは、当初SDSS i', r', g'の3色で使う予定だったが、従来使用していたBessel I, Vに比べて較正が面倒なので、Bessel I, Vに変更した。製作はほぼ順調に進み、3月にはフィルター以外は完成した。来年度ニュージーランドに送り、試験観測を開始する。この新カメラには、オートガイダーも付属しており、トラッキング精度の向上により長時間露出が可能となり、これまでに比べて暗い天体が観測可能となり、測光精度も良くなることが期待できる。 実際に重力波の追観測を実施するには、重力波観測を行っているグループと学術協定を締結してアラートを受け取る体制を整える必要がある。最初の重力波アラートは、2016年頃、LIGO/VIRGOのグループによって出される予定である。これに備えて、今年度はこれに備えてLIGO/VIRGOグループと学術協定を締結した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、将来の重力波天体の追観測に備えてそのための準備を行うものである。ニュージーランド・マウントジョン天文台の1.8m広視野望遠鏡は、順調に稼働しており観測をする上で問題は無い。一方、61cm望遠鏡はコントロールシステムは古いIBM PCをベースとしており、故障の際の交換部品が無いといった問題があった。また、これまで61cm望遠鏡にはApogeeのCCDカメラを取り付けて使用していたが、2-3色同時に観測可能なシステムに更新することにした。 別予算で実施したコントロールシステムの更新は無事に終了し、新システムは問題無く稼働している。2年後に予定されている最初の重力波アラートに対して、望遠鏡本体の準備は完了した。新しい2-3色カメラについては、当初予定していたSDSS i', r', g'の3色を再検討してBessel I, Vの2色に変更した。製作はほぼ順調に進み、3月には本体が完成した。来年度ニュージーランドに搬送して試験観測する準備が整った。この新カメラが稼働すれば、望遠鏡3台で観測したに等しいデータが得られる。 ノーベル賞級の発見が期待される重力波の追観測は、従来のこの種の観測とは異なり、あらかじめ重力波観測グループと学術協定を締結する必要があることが判明した。今年度は、学術協定を締結し将来アラートを受け取る資格を取得した。 この様に、若干の変更はあるもののおおむね順調に準備が進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
上記の通り、望遠鏡の準備は完了した。今後は、当面新カメラを61cm望遠鏡に取り付け、試験観測を開始することになる。当面、重力波のアラートが無い状態での試験なので、マイクロレンズ事象やトランジット観測、ガンマ線バーストなどの観測に使用して試験と改良を行う。これは、平成26年度中に時間をかけて実施する。 実際に重力波天体の観測を行うには、重力波グループからのアラートを受け取る必要がある。このための学術協定は、すでに締結したが実際にアラートを受信するための準備が必要となる。このために必要となる技術的な問題は、LIGO/VIRGOグループから情報をもらってシステムを用意する必要がある。さらに、重力波追観測は従来のマイクロレンズ観測やガンマ線バーストなどの観測とは若干異なる部分があると思われる。ノーベル賞級の大発見となることが予想される重力波の直接検出では、秘密情報管理も重要となる。必要な注意事項を調査して、観測のマニュアルを作成して観測者に徹底する必要がある。 これらの準備を行って、2年後に予想される最初の重力波直接検出に貢献したい。
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