公募研究
新学術領域研究(研究領域提案型)
当初の計画通り、東京大学木曽観測所の1mシュミット望遠鏡と広視野カメラKWFC (Kiso Wide Field Camera)を用いて、高頻度の突発天体サーベイをKiso Supernova Survey (KISS)を推進した。安定して約100晩の観測を行い、約30天体の超新星爆発候補天体を発見し、そのうち5天体の分光同定に成功した。また、突発天体検出用のデータ解析パイプラインの大幅なアップデートを行った。パイプラインのアップデート後、人工天体を埋め込むことでシステム全体の効率を測り、即時突発天体検出率が90-95%程度であることを確認した。また、本研究計画の重要な要素である遠隔観測、自動観測に向けて体制を整えつつあり、実際に数日間の遠隔観測を実施した。また、突発天体発見後のフォローアップ体制を整えるため、国立天文台岡山天体物理学観測所での分光フォローアップ観測を開始した。木曽観測所でデータを取得し、同日中に突発天体を発見し、その晩のうちに岡山188cm望遠鏡で分光観測を開始する、という一連の流れを確認することができた。さらに、重力波が検出された後にどのような観測戦略を採用するかを検討するために、連星中性子星合体における輻射輸送シミュレーションを行った。連星中性子星合体からの可視光赤外線がこれまで予想されていたよりも10倍程度暗く、非常に赤いスペクトルを持つことが分かった。これにより、可視光での探査は長波長側(iバンド)で行うことが良いと結論づけた。
2: おおむね順調に進展している
平成25年度の研究計画は、1、超高頻度突発天体サーベイを実行すること、2、重力波天文学時代を見据えた遠隔観測、自動観測の環境を整えることであった。1、のサーベイ実行に関しては、安定して約100晩の観測を行い、得られたデータの即時解析を行うことで、30天体ほどの超新星候補天体を発見した。ほとんどの天体は、データ取得と同日中に発見されており、同日中に共同研究者へ報告されている。また、データ解析パイプラインの大幅な見直しを行い、検出の効率を向上させた。最終的に、人工天体を埋め込むことでシステム全体の効率を計測し、90-95%の効率が達成されていることを確認した。2、の遠隔観測、自動観測に関しては、環境の整備がほぼ終了し、実際のテストを開始した。これらに加えて、重力波検出後の観測戦略を検討するために、連星中性子星合体における輻射輸送シミュレーションを行った。突発天体サーベイ観測に加えて、このような理論的なアプローチも融合することで、重力波天文学時代の可視光突発天体観測に向けて準備を進めており、研究計画全体は概ね順調に進んでいると判断している。
引き続き、高頻度突発天体サーベイを実行する。平成25年度に準備を始めた遠隔観測、自動観測のシステムを徹底的にテストし、安定した無人観測が行えるようになることを目標とする。国立天文台岡山天体物理学観測所における分光フォローアップ観測も継続し、突発天体発見当日の分光同定を目指す。また、平成25年度までに木曽観測所で取得されたデータをオフラインで全て再解析し、短時間突発天体の再探査を行う。この結果に基づき、超新星爆発に限らず、短時間突発現象の発生頻度に関する論文を出版する。さらに、定常的なサーベイ観測に加えて、重力波天文学時代の観測を見据えて、Fermi衛星の広視野検出器Gamma-ray Burst Monitor (GBM)アラートのフォローアップ観測を開始する。GBMの天体位置決定精度は数度程度と、重力波望遠鏡の位置決定精度と同程度である。アラートを受けて迅速に探査領域をセットアップし、突発天体(GBMの場合はガンマ線バーストの残光)を探し出す一連の流れは、重力波天体の電磁波対応天体を探す手法と全く同じである。このFermi/GBMフォローアップに関しては、残光のスペクトルを考慮し、また月が明るくても観測可能なように可視光iバンドを用いて行う。研究期間中に少なくとも一例残光を検出することを目標とする。
すべて 2014 2013 その他
すべて 雑誌論文 (9件) (うち査読あり 9件) 学会発表 (13件) (うち招待講演 5件) 備考 (1件)
The Astrophysical Journal
巻: 780 ページ: 31
10.1088/0004-637X/780/1/31
The Astrophysical Journal Letters
巻: 782 ページ: L35
10.1088/2041-8205/782/2/L35
巻: 775 ページ: 113
10.1088/0004-637X/775/2/113
Monthly Notices of the Royal Astronomical Society
巻: 435 ページ: 2483-2493
10.1093/mnras/stt1469
巻: 767 ページ: 143
10.1088/0004-637X/767/2/143
巻: 767 ページ: 166
10.1088/0004-637X/767/2/166
巻: 432 ページ: 2463-2473
10.1093/mnras/stt605
巻: 772 ページ: L17
10.1088/2041-8205/772/2/L17
巻: 778 ページ: L16
10.1088/2041-8205/778/1/L16
http://4d2u.nao.ac.jp/t/var/download/index.php?id=NSMerger