研究領域 | 対称性の破れた凝縮系におけるトポロジカル量子現象 |
研究課題/領域番号 |
25103701
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研究種目 |
新学術領域研究(研究領域提案型)
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
佐藤 宇史 東北大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (10361065)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | トポロジカル絶縁体 / 鏡映対称性 / フェルミ面 / ディラックコーン |
研究概要 |
本年度は、3次元スピン検出システムの具体的な設計と製作、高分解能光電子分光装置への組み込みを行った。装置の建設・改良と同時並行して、トポロジカル絶縁体関連物質の電子状態において以下に示す研究を行った。 鏡面対称性によって保護された表面状態を持つトポロジカルクリスタル絶縁体SnTeにおいて、これまで測定されていた(001)面に加えて、(111)面の電子状態の決定を行った。その結果、(111)面においては、(001)面における二重ディラックコーンとは異なり、表面ブリルアンゾーンのΓ点とM点中心にそれぞれ単独のディラックコーンが存在する事を明らかにした。この実験結果は、鏡面対称性によって保護された表面状態の存在を強くサポートするものである。これまで同一物質で異なる表面方位のディラック電子構造は同定されてはおらず、このARPES実験により、バルクのトポロジーと表面電子状態の幾何学的関連性が初めて実験的に明らかになった。 トポロジカルクリスタル絶縁体であるSnTeのSnの一部をInで置換することによって超伝導が発現することがこれまで報告されている。超伝導の母体となる電子構造を明らかにする目的で、In-SnTeの高分解能ARPES実験を行い、3次元的なバルクのフェルミ面形状を決定する事に成功した。その結果、この物質は、バルクブリルアンゾーンのL点を中心とした小さな楕球型のホール的フェルミ面を有する事を明らかにした。さらに、Inを置換した試料においても母物質のSnTeと同様にトポロジカル表面状態が存在していることも見出した。以上の実験事実から、In-SnTeはバンド反転と鏡映対称性によって特徴付けられるドープされたトポロジカルクリスタル絶縁体であると結論した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
トポロジカル絶縁体においては、高精度のスピン分解ARPES実験により、フェルミ面のワーピングとスピン面直成分との関係を明らかにすることに成功した。また、トポロジカルクリスタル絶縁体においては、ことなる結晶面における電子状態を、ARPESを用いて初めて決定する事に成功した。またトポロジカル超伝導体候補物質であるIn-SnTeでは、常伝導状態の電子構造を決定できた。これらの研究はほぼ計画通りに実施されており、研究はおおむね順調に進展していると判断される。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、スピン分解光電子分光装置の更なる改良と同時並行して、種々のトポロジカル物質、とりわけトポロジカルクリスタル絶縁体関連物質の電子状態を精度よく決定するスピン分解ARPES実験を計画している。
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