公募研究
新学術領域研究(研究領域提案型)
本研究の目的は、近接場走査型光学顕微鏡を用いてスピン分裂したカイラルエッジ状態の空間分布測定とスピン注入を行い、時間反転対称性の破れたカイラルエッジ状態の理解を極め、新規な量子現象を開拓することである。トポロジカルな性質の立証には空間的な位相関係の解明が不可欠であるがそのような研究例は少なかった。本年度は、希釈冷凍機温度中での近接場光学顕微鏡を用いて光起電圧の空間分布を調べた。また、円偏光照射のための近接場光学プローブの開発に着手した。カイラルエッジ状態を形成する試料として、実績のある高移動度半導体ヘテロ接合ホールバー構造を用いた。試料表面に100 nm以下の光スポットを照射し、シュブニコフ・ド・ハース振動にスピン分裂が観測されている3.5 Tまでの強磁場、希釈冷凍機温度において光起電圧の空間分布を測定した。その結果、電子占有数が奇数よりやや大きい場合に、交換相互作用に起因したg因子の増大によるスピン分裂したカイラルエッジ状態を観測することに世界に先駆けて初めて成功した。外部磁場の掃引に伴い、このカイラルエッジ状態は試料の端に近づくことが観測され、試料端に約300nmのところでg因子が減少することが観測された。さらに、円偏光照射のための近接場光学プローブの開発に成功し、実際に、出射された円偏光度の評価を行い、カイラルエッジ状態へのスピン注入に必要な性能を有することを確認した。また、層状半導体、p波超伝導体Sr2RuO4、カイラルエッジ電流検出に向けたMicro-SQUID、分数量子ホール状態に関する研究を実施した。
1: 当初の計画以上に進展している
当初の研究計画にあった近接場プローブを用いたスピン注入手法の確立を行い、近接場走査型光学顕微鏡を用いて希釈冷凍機温度においてスピン分裂したカイラルエッジ状態の空間分布測定を実施し、交換相互作用に起因したg因子の増大に関わるスピン分裂したカイラルエッジ状態の空間分布の観測に成功した。さらに、近接場円偏光照射によるカイラルエッジ状態へのスピン流注入の実験を開始した。以上により、当初の計画以上に進展している。
本年度の成果を踏まえて、近接場円偏光照射によるカイラルエッジ状態へのスピン流注入、近接場円偏光照射によるカイラルp波超伝導体エッジ状態の探求を推進していく方策である。
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Physical Review B
巻: 89 ページ: 115317-1-6
10.1103/PhysRevB.89.115317
http://www.px.tsukuba.ac.jp/home/ecm/snomura/lab/