公募研究
本研究は、トポロジカル超伝導体として期待されるルテニウム酸化物超伝導体（Sr2RuO4）の電子・スピン状態を明らかにし、スピン三重項超伝導の表面・界面で起こりうる新奇量子現象を理解するための基盤を形成することを目的とする。近年、角度分解光電子分光（ARPES）を用いたSr2RuO4の電子状態の研究では、表面状態と予測される新しい電子状態が観測され、注目を集めている。その起源としては、ラシュバ効果、表面下層の電子状態が挙げられているが、コンセンサスが得られていない。また、Sr2RuO4では強磁性・反強磁性磁気揺らぎの存在が中性子散乱で報告されているが、磁気揺らぎに由来したバンド構造の折れ曲がり（キンク構造）をARPESで観測した例も、フェルミ面のスピン状態を決定した例もない。本研究では（１）表面電子状態の起源の解明、（２）磁気揺らぎを媒介としたキンク構造の検証、さらには（３）Sr2RuO4の電子状態だけではなくスピン構造を明らかにすることを目的として、高分解能ARPES測定および高分解能スピン分解ARPES測定を行った。その結果、新しい表面電子バンドに関しては、表面層に由来する表面再構成バンドよりも経時変化が著しく、表面下層の電子状態による解釈が難しいことがわかった。また、高分解能ARPES測定から、磁気揺らぎの存在する低エネルギー領域（10meV以下）にキンク構造が存在することが示唆された。今後、酸素同位体効果も含めて、キンク構造の起源の同定を行う予定である。また、高分解能スピン分解ARPES測定からは、バルクの電子状態において、面内のスピン偏極度の観測に成功した。この結果は、スピン・軌道相互作用による解釈が難しいことから、その起源に関して更なる検証が必要である。さらに、本新学術領域メンバーと新たに共同研究を開始し、その準備を着実に進めることが出来た。
26年度が最終年度であるため、記入しない。
すべて 2015 2014
すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (5件) (うち招待講演 1件)
Physical Review B
巻: 91 ページ: 115139(1)-(9)
10.1103/PhysRevB.91.115139
New Journal of Physics
巻: 17 ページ: 013028(1)-(11)
10.1088/1367-2630/17/1/013028
Applied Physics Letters
巻: 241602 ページ: 241602(1)-(4)
10.1063/1.4903824
Journal of Physics: Condensed Matter
巻: 26 ページ: 455501(1)-(8)
10.1088/0953-8984/26/45/455501
巻: 89 ページ: 205134(1)-(6)
10.1103/PhysRevB.89.205134
