研究領域 | 対称性の破れた凝縮系におけるトポロジカル量子現象 |
研究課題/領域番号 |
25103719
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研究種目 |
新学術領域研究(研究領域提案型)
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研究機関 | 兵庫県立大学 |
研究代表者 |
住山 昭彦 兵庫県立大学, 物質理学研究科, 教授 (30226609)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 重い電子系超伝導体 / ジョセフソン効果 / 点接合分光 / 多重超伝導相 |
研究概要 |
本年度は、多重超伝導相を示す物質として、UPt3とUBe13を対象とし、前者についてはs波超伝導体との間のジョセフソン効果の測定を、後者についてはジョセフソン効果と点接合分光の研究を行った。まず、UPt3のジョセフソン効果については、電流がa軸方向の素子について圧力セル内に導入して測定を行い、ジョセフソン臨界電流の磁場依存性がフラウンホーファー型回折図形を示していることから、高圧でも接合の破壊や劣化が起きないことを確認した。また、圧力を増やすことで、これまで測られていたB相に加えて、C相でもs波超伝導体との間にジョセフソン効果が存在することが明らかになった。この結果は最近提案されたE1uの秩序変数と矛盾していない。 一方、UBe13については、多結晶を用いてs波超伝導体との間のジョセフソン効果について調べたが、以前に比べて臨界電流がかなり小さな素子しか得られないことがわかった。この理由としては、平滑な表面に作成することにより良質の接合を得るため、UBe13試料の研磨を行ったことで、表面に高抵抗の層が生じた可能性が考えられ、常伝導状態での抵抗率が大きい、UBe13特有の性質が現れたと考えられる。この臨界電流の抑制により、多重超伝導相をまたいでジョセフソン効果を示す素子が得られなかったため、ジョセフソン効果では多重超伝導相の研究が行えなかった。一方、点接合分光では、零バイアスでの接合抵抗がバルクの超伝導転移温度で減少するのに加え、より低温の特定の温度でさらに減少することが観察された。後者の減少が見られる温度は、U1-xThxBe13において見られた多重超伝導相の相線を延長した付近の温度に近く、他の測定でも示唆されていた、低温側の何らかの相転移が検出された可能性がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定では、本年度はUPt3とUBe13について、主にジョセフソン効果の研究をおこなう予定であったが、冷却に用いる希釈冷凍機の循環用ポンプが故障したため、冷凍機の最低温度が得られず、年度の前半は転移温度の高いUBe13の研究を中心として行った。しかしながら、上記の結果報告にも記したように、UBe13ではジョセフソン効果の抑制により多重超伝導相の研究が難しいことがわかったため、急遽点接合分光の研究を前倒しで開始したところ、多重超伝導相の存在を示唆する結果を得ることができた。また、年度の後半には、ポンプの交換により本来の冷却能力が得られるようになったため、直ちにUPt3のジョセフソン効果の研究を開始したところ、高圧下でも接合が劣化することなく、ジョセフソン効果の存在を確認することができた。以上のように、実験計画中の各項目の開始時期に多少の前後があったものの、概ね順調に推移していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
まず、UPt3については、本年度の研究で高圧下でもジョセフソン効果の測定が可能であることが確認できたので、さらに電流方向の異なる素子を用いて研究を継続する予定である。特に電流がc軸方向の場合、E1uの秩序変数では、B相でジョセフソン効果が可能で、C相では禁止されるという違いが生じることが予想されているので、相転移に伴うE1u特有の振る舞いが観測される可能性がある。また、点接合分光についても、本年度に測定用プローブが完成し、分光測定が可能になっているので、UPt3の各軸方向から常伝導体の針を接触させることで、各方向から見たエネルギーギャップの大きさの情報を得ることを目指す。 一方、UBe13については、本年度の研究を通じて、点接合分光で超伝導多重相の検出が可能であることがわかったので、最近提供されたUBe13単結晶を用いて、点接合分光の研究を行う。特に、本年度用いた多結晶と同様な、多重相を示唆するスペクトルが得られるかについて確認する。
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