研究領域 | 対称性の破れた凝縮系におけるトポロジカル量子現象 |
研究課題/領域番号 |
25103720
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研究種目 |
新学術領域研究(研究領域提案型)
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
新田 宗土 慶應義塾大学, 商学部, 准教授 (60433736)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | トポロジカル・ソリトン / 量子渦 / 非可換統計 / ボース・アインシュタイン凝縮 / ボゴリューボフ・ドジャン方程式 / ドメイン壁 / 南部ゴールドストーン・モード |
研究概要 |
多成分ボース・アインシュタイン凝縮(BEC)における位相的励起について以下の研究を行った。 1.2成分BECに、ラビ結合(2成分超伝導のジョセフソン項)を入れると、渦に対しては、2種類のフラクショナル渦がドメイン壁で結ばれ、渦分子を形成する。この系を回転させるとラビ結合がない場合は、三角渦格子と四角渦格子が現れることが知られていた。ラビ結合を入れ、徐々に強くして行くと、渦分子の組み換えが起こることを発見した。2.3成分BECの渦格子の構造を調べた。2成分とは異なり、いつでも三角格子が現れることを発見した。3.一般により成分の多い、多成分BECにおける渦分子の構造を調べた。まず成分が多いために、各フラクショナル渦をドメイン壁でつなぐかどうかは対応する成分間にラビを導入するかどうかで決まっている。よって、渦分子の構造はグラフ理論で分類できることがわかり具体的に4,5成分の分類を行った。さらに、ラビの結合の大きさを変えることで、渦グラフの形を変形することが出来る。 4.1成分の凝縮では渦の多角形としては6角形までが安定であることが知られていた。2成分BECの場合は、2種類のフラクショナル渦が存在するため、渦多角形はその倍の12角形まで安定であることを発見した。 5.2成分BECにおいて、相分離をする領域では、2つの成分が空間的に分かれ、ドメイン壁が現れる。このドメイン壁には、渦が端点を持つことができ、超弦理論のDブレーンと似た構造を持つため、Dブレーン・ソリトンと呼ばれている。このDブレーン・ソリトンにおける、ドメイン壁の曲り方などの様々な性質を調べた。 6.渦のケルビン・モードが並進対称性の破れに対応する南部ゴールドストーン・モードとして解釈できることを議論した。 7.フェルミ凝縮系のボゴリューボフ・ドジャン方程式の自己無頓着な厳密解として多重ソリトン解を構成した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
応募の際にあげた3つのテーマは ①渦や1次元接合のマヨラナ・フェルミオンとトポロジカル量子計算への応用 ②ボーズ・アインシュタイン凝縮におけるトポロジカル励起やDブレーンの研究 ③超伝導やフェルミ原子気体における自己無頓着な厳密解とその応用 であった。このうち、②のボース・アインシュタイン凝縮の位相励起の研究は様々な方向に大きく進展した。また、③については、境界が一定である場合の最も一般的な解として、多重ソリトン解を構成した。しかし、①のマヨラナ・フェルミオンを用いた、トポロジカル量子計算に関しては、研究が難航しており、満足な進展がまだ得られていない。 よって、自己評価は「おおむね順調に進展している」と、「やや遅れている」の中間よりも、「おおむね順調」側であると自己評価した。
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今後の研究の推進方策 |
これまで、ボソン系の研究は大きく進展したのだが、トポロジカル量子計算を行うためには、渦などにとらわれたフェルミオン励起(特にマヨラナ・フェルミオン)が必要である。このために、フェルミ系の研究をより進展させる必要がある。 実績概要の7.で述べたように、フェルミ系の研究としては、ボゴリューボフ・ドジャン(BdG)方程式の自己無頓着な厳密解として多重ソリトン解を構成した。各ソリトンの上にはゼロモード・フェルミオンが捕らわれている。この手法を、p波超伝導・超流動に応用することを一つの目標とする。p波の場合も、同様にソリトン解を構成できるが、その際に捕らわれるフェルミオンは、マヨラナ・フェルミオンである。これまでは、渦やエッジについてはよく調べられていたが、キンクなどソリトンの場合はあまり調べていない。ソリトンで構成できれば、例えば、1次元のp波細線でも、端だけでなく中間点でもマヨラナフェルミオンを構成できる。よって、この場合は、もしソリトンを移動させることが出来れば、細線を固定したまま、マヨラナ・フェルミオンを移動させることも原理的に可能である。よって、これまで提案されている、Tジャンクションを用いたトポロジカル量子計算よりも、より効率的な可能性があり、工学的応用としてより優れていると期待できる。 次に自己無頓着な厳密解は、今までのところ1次元系でのみ得られている。2次元に拡張して、渦の場合にも構成することが次の目標である。さらに、この場合も、p波に拡張できれば、渦のマヨラナ・フェルミオンを扱えるようになる。 もう一つ、考えていることは、ユニバーサル量子計算である。通常のマヨラナ・フェルミオンを用いたトポロジカル量子計算の弱点は、ユニバーサルな計算ができないことである。これに、アハラノフ・ボームのフラックスを加えることで、ユニバーサル計算ができると考えている。
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