研究実績の概要 |
連続対称性が自発的に破れると,ギャップレス励起として南部Goldstone(NG)モードが現れる。物性系など非相対論的な系では,1次分散の(タイプ1の)NGモードと2次分散の(タイプ2の)NGモードが存在するが,その数に関して一般論がなかった。最近,渡辺村山と日高らによって、非相対論的な系のNGモードについての理解が進展し,内部対称性については現れるNGモードの数の完全な分類が成されたが,時空対称性の自発的破れの場合については,まだ一般論がない。そこで、本研究では,時空対称性の破れる場合として,特に最近理解が進んでいる,渦やソリトンが存在する場合のNGモードについて研究を進まめた。この場合のNGモードは渦やソリトンに局在したモードとなる。昔からよく知られているように,渦糸の振動はケルビン・モードである。これは,渦によって自発的に破られた並進対称性に対応した,タイプ2のNGモードであることを見出した。次に,磁性体のマグネティック・ドメイン壁では,並進対称性とスピン回転の対称性が自発的に破れるが,これに対応したタイプ2のNGモードが一つ現れることがわかった。また,磁性体のスキルミオンでは,タイプ2のNGモードとして,渦糸と同様のケルビンモードが現れることがよく知られているが,他にスケール変換とスピン回転からなるタイプ2のNGモードが現れることがわかった。これらの場合に,タイプ2NGモードを構成する破れた対称性の生成子が非可換であるという,渡辺Braunerの関係式が,時空対称性の場合でも成立することを示した。また,量子効果について,渦やソリトンに局在したモードは,制限された空間に存在するために,一般にはMermin-Wagnerの定理に抵触するが,タイプ2NGモードは量子効果のもとでも,ギャップレスに保たれることがわかった。
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