研究領域 | 対称性の破れた凝縮系におけるトポロジカル量子現象 |
研究課題/領域番号 |
25103721
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研究種目 |
新学術領域研究(研究領域提案型)
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研究機関 | 独立行政法人理化学研究所 |
研究代表者 |
石黒 亮輔 独立行政法人理化学研究所, 創発物性科学研究センター, 協力研究員 (40433312)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | ルテニウム酸化物 / カイラル超伝導 / SQUID |
研究概要 |
本研究ではサブミクロンサイズのカイラル超伝導体Sr2RuO4-Ru共晶系とS波超伝導体とのハイブリッドdc-SQUID を作製し、カイラル超伝導体Sr2RuO4 における4つの未解決の問題である「カイラルドメイン」、「カイラルエッジ電流」、「sp接合における高次の超伝導電流」、「半整数量子渦(フラクソイド)」について明らかにすることを目的として研究を行っている。 平成25年度はFIB加工によってカイラルドメインの状態を制限したハイブリッドSQUIDにおいて、臨界電流の磁場応答の周期が量子磁束に対応したもののほかに量子磁束の半分の値に対応する周期が現れることを見出し、またこのSQUIDにマイクロ波を照射したところ、通常の整数量子磁束に対応したの周期性のほか半整数と2倍整数の周期性を確認し、このSQUIDのもつ周期性の異常について「半整数量子渦(フラクソイド)」や」、「sp接合における高次の超伝導電流」に関連する可能性もふくめて検討した。結論は、この周期性の異常はSr2RuO4中にできた「カイラルドメイン」間のドメイン壁による接合におけるジョセフソン電流が通常の2e(e:素電荷)のクーパー対でなく、4eを単位にして運ばれ、ジョセフソンの関係が2次のオーダーになるという可能性を示した。またこのSQUIDにおいて、カイラル超伝導体に特徴的な時間反転対称性の破れも確認した。 また議論をさらに明確にするために計画した、バルク試料から切り離したマイクロハイブリッドSQUIDの作製法も確立し、現在測定を始めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ハイブリッドSQUIDにおいて半整数の周期性を確認したことで、c軸方向の「カイラルドメイン」間の超伝導電流が4eを単位にして流れるということを示し、カイラル超伝導体のカイラルドメインに対する新たな知見を得ることが出来た。またSQUID臨界電流の磁場変化において確実な時間反転対称性の破れも確認した。また、半整数の周期性に加えて量子磁束の2倍の周期性もACジョセフソン効果であるシャピロステップで観測されこれについてはエッジにおけるマヨラナフェルミオンの影響を含めて検討している。つまり単一カイラルドメイン状態の実現には至らなかったが、2つのカイラルドメイン間のドメイン壁の存在が露にハイブリッドSQUIDで観測される周期性に影響を与えることが確認できたといえる。 またFIB加工によってバルクのSr2RuO4から完全に切り離したハイブリッドSQUIDの作製も行い、このSQUIDに対する測定配線のリソグラフィーによる作製に問題であったが、FIBによるタングステンデポジションによる超伝導配線を行うことで解決した。
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今後の研究の推進方策 |
バルクから完全に切り切り離したハイブリッドSQUIDのSRO部を微小化することで、引き続き半整数フラクソイドとこれまでに明らかになったカイラルドメイン間のジョセフソン電流についてさらに制御した検証を行う。 また、我々の使用しているFIBによるタングステンデポジション配線でも5K程度で超伝導転移することが確認できたためS波超伝導体としてニオブだけでなく、FIBタングステン膜を使ったSQUIDの作製も行い新しいsp接合についても検証を行う。 また、Sr2RuO4-Ru共晶の一個のRuに電子ビームリソグラフィーを用いて100ナノメートル程度の接合、配線を行うことでRuインクルージョン周りの超伝導状態と3K相における超伝導状態の検証を行う。
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