研究領域 | 感覚と知能を備えた分子ロボットの創成 |
研究課題/領域番号 |
25104502
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研究種目 |
新学術領域研究(研究領域提案型)
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研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
古川 英光 山形大学, 理工学研究科, 教授 (50282827)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | マクロマシン / 高分子構造・物性 / 機械材料・材料力学 / ゲル / ゲルレンズ |
研究概要 |
本研究では、進展の著しい高強度・高機能性ゲルの技術によってものづくりに変革をもたらすことを最終目的として、眼球の画期的な治療につながる世界初のソフト&ウェットな眼球ロボットを開発する。眼球は光を操る生体ゲルであり、ゲルでできたロボットであると捉えることができる。本研究は、これまでの申請者の研究成果に立脚し、高強度ゲルの技術を活かして水晶体の治療に適用可能な焦点調節可能な眼内レンズを開発し、次に材料化学的なアプローチで眼内レンズ用ゲル材料の屈折率や作動温度を最適化し、ゲルの構造解析と物性評価の技術や機械工学的なアプローチを駆使して新しい眼内レンズを組み込んだ、実物大のソフト&ウェットな模型眼システムを開発する。 平成25年度は下記を実施した。 1. 焦点調整型レンズの設計 2. レンズ用ゲルの開発 3. 焦点調整系の開発 4. 変形するゲル水晶体による焦点可変実験
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実績の概要の各項に関して、下記の事項を達成した。 1. 焦点調整型レンズの設計: 透明で柔軟なゲル材料をレンズとして用いることを想定して、ヒトの水晶体のサイズに近い、焦点調整型の小型レンズを設計した。 2. レンズ用ゲルの開発:屈折率が高くなると予想されるモノマーを選び、屈折率が1.4以上のレンズの材料として利用可能なゲルを開発した。 3. 焦点調整系の開発:1.の設計に基づき、レンズを装着するためのパーツを作製した。アクリル板の削り出しでレンズホルダーを作製し、液体の排出と吸入で、レンズの厚みを可逆的に変化できるようにした。 4. 変形するゲル水晶体による焦点可変実験:上記の1.~3.の成果に基づき、実際に変形するレンズを組み立て、焦点が可変し、遠近を見ることができるかどうかを評価した。具体的にはレーザー光の屈折の確認を行った。 この間、雑誌論文(査読付論文)3件、招待講演1件、国際学会発表4件、国内学会発表8件を行い、外部に成果を公表した。
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今後の研究の推進方策 |
5. 屈折率可変ゲルの開発 水中で高い屈折率を持つゲルが、水中で働く変形レンズには必須の材料ではあるが、実際に精密に焦点調整等を行うことを想定すれば異なる屈折率をもつバラエティに富んだ透明ゲル材料が必要である。そこで昨年度に開発した高屈折率ゲルについて、屈折率を徐々に小さくする方法を検討する。 6. 温度制御ゲルの開発 前項5.が上手く行き始めたら、今度は温度によって力学物性が変化するゲルの開発に着手する。これまでの研究成果から、透明な形状記憶ゲル(SMG)を開発できることがわかっており、このSMGをレンズ材料に直接適用することを検討する。通常、われわれは60℃近傍で内部構造の転移が生じ、やわらかさが変化するSMGを用いているが、組成によってこの転移温度を0~60℃の範囲で変化させられると予想している。 7. レンズの温度制御 6.が上手く行ったら、温度制御可能なゲルでレンズを作製し、レンズに送液する液体の温度を可変させることで、形状を保持したり、元の形に戻ったりするレンズ系を開発する。これが成功すれば、ある種の眼球ロボットの原型が開発される。 8. ゲルレンズ評価用模型眼の開発 本研究で開発した焦点可変レンズを眼内レンズに用いるためには、ヒトの眼の水晶体手術に相当するモデルシステムを構築し、そのシステムの中に眼内レンズを装着し、変形動作が可能かどうかを検証する必要がある。この検証のための模型眼を設計し開発を進める。 9. ゲルレンズを組み込んだ模型眼の外部制御 7.と8.が上手く行ったら、温度制御可能なレンズを模型眼の内部に組み入れることで、「動く模型眼」=「眼球ロボット」と考えて、眼球ロボットの性能評価を行う。
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