研究領域 | 感覚と知能を備えた分子ロボットの創成 |
研究課題/領域番号 |
25104506
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
寺井 琢也 東京大学, 薬学研究科(研究院), 助教 (00508145)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 分子認識 / ナノマシン / 分析科学 / 先端機能デバイス / 合成化学 |
研究実績の概要 |
外界の状況を的確に認識して物理的な応答を返す「分子ロボット」の創成には、外部からの入力シグナルを感知し下流へと受け渡すセンサの開発が必要不可欠である。論理応答を実行する分子センサとしてこれまで主に研究されてきたのは蛍光発光をアウトプットとするものであるが、これらのセンサは下流デバイスへのシグナル伝達効率という観点では不十分な点が多い。そこで本研究では、光励起に伴い一重項酸素等の活性酸素種(ROS)を産生する「光増感剤」に着目し、これを基盤とする新たなセンサの開発を目指している。 本年度はまず、光増感剤に分子認識能を付与するための検討を行った。具体的には、pHに依存して分子内のスピロ環形成が起こることで吸収波長が大きく変化し、結果的に光増感能が変化する化合物を設計・合成した。このデザインを拡張することで、様々な分子種を標的とする機能性光増感剤の開発が可能と期待される。また、酸性環境下で光誘起電子移動(PeT)が解消されることで増感能が上昇する化合物についても設計および合成を達成した。しかし、合成した増感剤はそのままでは脂溶性が高いため水溶液中では凝集体を形成しやすく、溶液中に単分散させた状態での機能評価は難しいことが判明した。 続いて、合成した化合物を「分子ロボット」の骨格であるリポソーム(GUV)の表面に局在させて機能を評価することを試みた。正確な評価のためには安定して均質なGUVを作成する技術を確立することが不可欠であるが、標準的な遠心沈降法や静置水和法を用いた場合、増感剤を脂質に添加するとGUVの調製が上手くいかない場合があることが示唆された。そこで現在は、GUVの調製方法を工夫するとともに、増感剤の機能評価方法の確立に向けた検討を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
機能性増感剤の開発については当初の計画通り光誘起電子移動(PeT)や分子内スピロ環化を作動原理とする化合物を設計・合成することに成功し、種々の検討を行った。当初の計画では本年度中の達成を予定していた、リポソーム中で期待通りの性能を示す化合物の開発には成功していないが、この部分は共同研究を通じて技術の習得に努めることで今後解決したい。
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今後の研究の推進方策 |
光増感剤に対する複雑な分子認識機能の付与については今後の検討課題とし、まずはリポソーム表面で光増感剤を機能させることに注力する。当初の計画では増感剤に脂肪酸を導入する予定であったが、脂溶性が高い分子骨格を用いればあえて脂肪酸を修飾する必要がないことが示唆されたため、2I-BODIPYを初めとする平面的な光増感剤をそのまま利用することが可能と考えられる。リポソームについては、他の作成方法への変更も含めて引き続き条件検討を実施する。
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