研究領域 | 感覚と知能を備えた分子ロボットの創成 |
研究課題/領域番号 |
25104510
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研究種目 |
新学術領域研究(研究領域提案型)
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研究機関 | 北陸先端科学技術大学院大学 |
研究代表者 |
濱田 勉 北陸先端科学技術大学院大学, マテリアルサイエンス研究科, 准教授 (40432140)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 膜ドメイン / リポソーム / 生体膜 / ベシクル / ペプチド |
研究概要 |
細胞サイズの人工膜(リポソーム)とゲスト分子を集積させた分子ロボットの設計を進めた。複合分子から成るシステムを制御するには、膜と部品(分子)の相互作用の理解が重要となる。先ず、自己会合性のアミロイドβペプチドとリポソームとの相互作用解析を明らかにした。相分離により流動性の異なる領域が共存するリポソ-ムを作製し、ペプチドを添加した。光学顕微鏡観察の結果、ペプチドはリポソーム膜面の柔らかい領域(disorder相)に選択的に局在することが分った。そして、リポソームはドメイン領域(order相)を出芽させる変形ダイナミクスを示した。この出芽ダイナミクスは、細胞の物質輸送であるエンドサイトーシス機能を人工的に再現したものである。また、リポソーム膜面内でブラウン運動する膜ドメインの挙動を解析したところ、ドメイン拡散係数の減少および膜の粘性増加がペプチドにより引き起こされることを見出した。また、このアミロイドβペプチドは自己会合特性を持つが、オリゴマー状態のペプチドが最も膜変形を引き起こすことが明らかとなった。現在、ペプチド以外の部品として、ナノ粒子やDNAと膜の相互作用解析も進めている。今後、膜と様々な部品との相互作用の仕組みを明らかにし、動的な分子ロボットの制御に繋げる。 また、分子ロボットの器となる人工膜リポソームの形成メカニズムの解明に取り組んだ。リポソーム形成法は幾つか存在するが、リポソーム内部への物質封入の観点から、油中液滴を用いる新しい作製手法の開発が期待されている。そこで、リポソーム作製効率の向上を目指し、その原理の解明を行った。油中液滴がリポソームへ移行するダイナミクスの詳細を検討し、実験と理論の両面から移行メカニズムを明らかにした。細胞サイズの約10μmという大きさが、液滴からリポソームへの移行に最も効率が良いという興味深い知見が得られた。この成果は、Soft Matter誌の表紙を飾った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
複合分子から成る人工細胞ロボットを制御するために最も重要となる、膜と部品(分子)の相互作用の理解が進展した。特に、アミロイドβペプチドと膜の相互作用の成果は、膜の変形や流動性の制御に利用することが期待できる。また、ロボットの基本パーツである人工膜リポソームの形成メカニズムの理解も進んだ。リポソームの形成法はまだまだ発展途上である。液滴からリポソームを作成する手法は様々な物質を封入することが可能であり、今後の研究を進める上での基盤となる技術が構築できた。この様に、動く分子ロボットの作成に向けて順調に研究が進展している。
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今後の研究の推進方策 |
1年目に、膜とペプチドの相互作用の理解が進展した。今後さらに、コロイド、DNA、タンパク質などの様々な部品と膜の相互作用を明らかにする。コロイドは、親水・疎水性のデザインが可能であり、DNAが高分子のエントロピー効果が期待できる。これにより、融合や分裂などの高次の膜構造の制御技術の開発や刺激応答性界面のデザインを進める。また、光や電場などを利用した脂質膜のダイナミクス制御系の開発も同時に進める。そして、膜の時空間ダイナミクス制御と膜と物質との複合化挙動をカップルさせ、外部刺激に応答して運動する分子ロボットを設計する。
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