研究領域 | 感覚と知能を備えた分子ロボットの創成 |
研究課題/領域番号 |
25104511
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研究種目 |
新学術領域研究(研究領域提案型)
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研究機関 | 北陸先端科学技術大学院大学 |
研究代表者 |
坂本 隆 北陸先端科学技術大学院大学, マテリアルサイエンス研究科, 助教 (80423078)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 機能性ペプチド / 光反応 |
研究概要 |
光によるDNAの捕捉・放出が可能なペプチドを開発することを目的に、DNA光クロスリンカーとして知られる3-シアノビニルカルバゾール(cnvCz)をペプチドに導入することとした。ペプチドとしてDNAと相互作用することで知られるGCN4ペプチドを採用し、DNAとの相互作用部位近傍のアミノ酸にcnvCzを導入することにした。また、高機能な光反応性ペプチドの開発にはcnvCz導入位置および、cnvCzとペプチド鎖をつなぐリンカーの最適化を行う必要があるため、容易にcnvCz導入位置、リンカーの変更が可能なcnvCzの導入手法としてアルキン―アジド間のクリック反応を採用した。そこでまず、DNAとの相互作用部位近傍のアミノ酸にプロパルギルグリシンを導入したペプチドを合成し、これにクリック反応可能なcnvCz誘導体(C2, C4およびC6アジド)を合成した。これらの化合物はNaHによるcnvCzからの水素引き抜き後、ジブロモエタン、ジブロモブタンあるいはジブロモヘキサンと反応させ、精製後、アジ化ナトリウムと反応させることで高収率で得ることに成功した。また、cnvCzのアジド誘導体と種々の位置にプロパルギルグリシンを持つGCN4ペプチド(5種類)とクリック反応させることで、定量的に目的のcnvCz修飾ペプチド(15種類)を得ることに成功した。以上より、ペプチドに対するcnvCzの簡便かつ高効率な修飾法を確立することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の計画ではcnvCzを導入したアミノ酸のFmoc誘導体を合成し、これを用いたペプチド固相合成によるcnvCzの導入を計画していた。しかし、技術上の問題からFmocアミノ酸の収率が悪く、クリック反応の応用によるcnvCz修飾に切り替えた。このことにより、進捗に若干の遅れが出た。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度の成果として、ペプチドに対する簡便かつ高効率なcnvCz修飾法の確立に成功し、これにより15種類のcnvCz修飾GCN4ペプチドを得た。今後、これらのGCN4ペプチドのSS結合形成による2量化を行い、cnvCz修飾GCN4ペプチドダイマーを得る。さらに、これらのペプチドダイマーとDNAとの相互作用解析並びに光反応性を、HPLC、ポリアクリルアミド電気泳動、SPR等により評価する。評価結果から最適なcnvCz導入位置およびリンカー長を明らかにするとともに、他の機能性ペプチドとの複合化等に挑戦する。 一方で、ハイドロゲルを形成する高分子材料(アガロース・ポリアクリルアミド等)にcnvCzを導入することにより、ゲル中にDNAを捕捉・放出可能な機能化ハイドロゲルの開発に着手する。まずは、アガロースへのcnvCz導入のため、アミノ基で修飾されたcnvCzを合成し、過ヨウ素酸酸化により活性化したアガロースに反応させることで、cnvCz修飾アガロースを得る。透析等による精製後、NMRによる修飾率の評価等を行う。また、このcnvCz修飾アガロースと未修飾アガロースを混合することで、cnvCz含有率の異なるアガロースゲルを調製する。DNAと混合、光照射、洗浄の後、ゲル中に含まれるDNAをSYBR goldで染色することで、DNAの捕捉能力を評価する。さらに312 nmの紫外光照射によるDNA放出能力についても評価する。
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