光によるDNA捕捉・放出能力を持つ新たな機能性ペプチドを開発することを目的に、DNAとの光架橋能を有する3シアノビニルカルバゾール(cnvCz)を導入したDNA結合性ペプチド(GCN4)を合成し、その機能評価を行った。前年度(平成25年度)までに確立したクリック反応によるcnvCz導入法により、cnvCzの導入位置およびリンカー長の異なる15種類のcnvCz修飾ペプチドを合成し、2重鎖DNA(蛍光修飾、CRE14配列)との混合溶液を調製した。これにUV光(366 nm)を照射後、変性ポリアクリクアミドゲル電気泳動による分析を行った結果、光照射後にのみ泳動度の低いバンドが出現したことから、これらのペプチドによるDNAの光捕捉が可能であることが明らかとなった。また、この光反応の収率がcnvCzの導入位置およびリンカー長に大きく依存することが明らかとなり、リンカー長をコントロールすることで光反応性を制御できる可能性が示された。光捕捉後のペプチド-DNA複合体に312 nmのUV光を照射した結果、泳動度の低いバンドが消失し、未反応のDNAのバンドのみが検出されたことから、光照射によるDNAの放出も可能であることが明らかとなった。 以上のことから、設計・合成した光反応性ペプチドが光によるDNA捕捉・放出能力を持つことが明らかとなった。またその光反応性はcnvCzを導入するリンカー長を変化させることで制御可能であることが明らかとなった。今後、ペプチドファイバーやリポソームへ組み込むことにより、分子ロボットの部品として有力視されている様々な分子デバイスに、情報素子であるDNAを自在に固定・放出できるツールとなることが期待される。
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