研究概要 |
本研究では、化学反応性部位を導入した自己集合性分子の形成する「ナノ構造体」と「酵素」を組み合わせることで「標的分子(例えば病気の指標となるバイオマーカー)に対してデジタル回路型(AND, OR等)に論理応答する 分子システム材料」を創成することを目的とする。小さな分子が超分子化学的な弱い相互作用で自発的に集まる ことで得られるナノ構造体は、本新学術領域研究で開発を進める分子ロボットの骨格として利用できる可能性がある。 申請者らは、これまでに化学反応性部位を修飾したペプチド誘導体が水中でナノファイバーネットワークを形成し、さらに特定の化学反応によりそのナノファイバーが消失することを見出した。例えば、酸化反応に応答するナノファイバーネットワークは特定の酸化剤に応答して消失した。さらに、酵素反応と組み合わせることによって、ナノファイバーが様々な生体分子に応答して消失することを見出し、「応答刺激の拡張」が可能であることを示した。本手法は一般化可能であり、還元反応に応答するナノファイバーの開発とその応答刺激の拡張にも成功した。また、これら2種類の化学反応性ナノ構造体を混合し、病気の指標となるバイオマーカーとなり得る生体分子に対してデジタル回路型(AND, OR等)に論理応答する 分子システム材料に繋げることが可能であることを実証した。現在は、これらのナノ構造体を脂質リポソームに封入し、刺激応答性ナノ構造体を骨格とするマイクロ構造体が、アメーバ型の分子ロボットとして機能することを実証することを目指している。
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