生体活動を司る制御器の多くが,ある種の確率要素(ゆらぎ)を積極的に活用して巧みな制御を実現していることが知られている.このような確率制御器は,分子スケールのシステムにおいて自然に現れ,分子ロボットの実現のために必要不可欠なものとなっている. 一方で,確率制御器は,「確率の影響を排除すること」を第一に考えてきた従来の制御工学の発想とは全く異なるものであり,その解析・設計には,従来の制御理論に立脚しつつ,全く新しい方法が必要とされる.本課題では,生体活動を司る制御器が生化学反応回路によって実現されていることに着目して,生化学反応回路で実現できる確率制御器のモデル化を行ない,その解析・設計手法を確立することを目指している.
最終年度である26年度は,化学反応ネットワークの構成要素が確率的に振舞う場合でも,システムのアトラクタが不変となるようなネットワーク構造の解析を行い,構造的に単安定,双安定,振動的となる種々の条件を導出した.これによって,目標の解析・設計手法を確立することができた.
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