研究領域 | 感覚と知能を備えた分子ロボットの創成 |
研究課題/領域番号 |
25104516
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研究種目 |
新学術領域研究(研究領域提案型)
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
大下 福仁 大阪大学, 情報科学研究科, 助教 (20362650)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 分散アルゴリズム / モバイルロボット / モバイルエージェント / 自己安定 / 自己組織化 |
研究概要 |
分子ロボットを実現するためには、自律的に動作する膨大な分子デバイスを、自己組織化によりボトムアップに組み立てる必要がある。本研究では、分子デバイスを従来の計算機に対応させ、分子ロボットで低コストで実装可能な単純な分散アルゴリズムの開発を目標とする。平成25年度の主な成果は以下の通りである。 (a) 格子型ネットワークに対する単純な分散アルゴリズムの開発:格子型ネットワークにおいて、任意の経路を最小経路に変換するアルゴリズム、任意の木を幅優先木に変換するアルゴリズムを開発した。経路構成は3つの局所変更ルール、木構成は6つの局所変更ルールで構成されており、分子デバイス等の低能力な機器に対して実装しやすい単純なアルゴリズムであるといえる。 (b) モバイルエージェントに対するアルゴリズムの開発:モバイルエージェントとは、計算機ネットワーク内を自律的に移動するソフトウェアのことである。モバイルエージェントは局所的な状況をもとにタスクを実行する必要があり、これは分子ロボットの動作と共通点がある。本研究では、リング状のネットワークのうえでモバイルエージェントを1か所に集合させるアルゴリズムを提案した。 (c) モバイルロボットに対するアルゴリズムの開発:モバイルロボットとは、センサと移動機能をもつロボットで、自律的に移動しながらタスクを実行する。本研究では、格子型のネットワークにおいて、モバイルロボットを均一に配置するアルゴリズムを開発した。このアルゴリズムは、従来より少ない移動回数で目的を達成できる。さらに、メモリ書き換え回数を定数回に抑えるという、分子ロボットに適した特性を実現している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年度は、(1)分散アルゴリズムの単純さの定式化、(2)個別の問題に対する単純な分散アルゴリズムの開発を目標としていた。 (1)については、領域内の研究者と議論を行うことで、分子ロボットに適したアルゴリズムの特徴が明らかになってきている。例えば、分子ロボットではメモリの書き換え回数に制限が必要である点などが挙げられる。これをふまえ、モバイルロボットの均一配置問題に対して、メモリの書き換え回数を定数回に抑えるアルゴリズムを開発した。本アルゴリズムは平成26年度に論文誌へ投稿予定である。 (2)については、格子型ネットワークにおいて、経路構成、木構成を実現する単純なアルゴリズムを提案した。これらのアルゴリズムは、定数個の局所変更ルールで構成されており、分子デバイスへの実装も行いやすいと考えられる。 以上の点より、本研究はおおむね順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度は、(1)分子ロボットに適したアルゴリズムの開発、(2)分散アルゴリズムの効率と単純さのトレードオフの解明、(3)単純な分散アルゴリズムの設計手法の開発を実施する予定である。 (1) 分子ロボットに適したアルゴリズムの開発:昨年度、研究領域内の研究者と議論を行うことで、分子ロボットに適した計算モデルの特徴が明らかになってきている。具体的には、計算能力が非常に弱い、メモリの書き換え回数が有限である、莫大な数のノードを用意できる、などの特徴がある。そこで、計算機ネットワークモデル、モバイルロボットモデルにおいて、これらの特徴をふまえた分散アルゴリズムの開発を行う。 (2) 分散アルゴリズムの効率と単純さのトレードオフの解明:昨年度、格子型ネットワークに対して、効率的かつ単純な経路構築アルゴリズム、木構築アルゴリズムを開発した。現時点のアルゴリズムは、格子型ネットワークに対してしか適用できないため、この適用範囲の拡大を試みる。適用範囲の拡大によって、アルゴリズムの効率・単純さがどのように変化するかを解析する。また、その他の問題に対しても、分散アルゴリズムの単純さと効率のトレードオフを解析する。これらの解析をもとに、分子ロボットに適した単純さと効率を両立したアルゴリズムの開発を行う。 (3) 単純な分散アルゴリズムの設計手法の開発:これまでに得られた単純な分散アルゴリズムを抽象化し、多くの問題に適用できる単純な分散アルゴリズムの設計手法を開発する。
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