本研究は,化学反応回路系を単純な機能を持つ制御可能な粒子群で構成される分散システムと見なし,粒子単体では実現困難な演算や大容量メモリといった回路素子を粒子群の協調動作により実現する手法の確立を目指す.特に,自律的に移動するロボット群から成る分散システムの制御理論をもとに,化学反応回路系の制御方法を確立することを目指す.本年度は以下の課題に取り組み,成果を得ている. (i)2次元平面上のロボット群の乱択制御:決定性アルゴリズムによるロボット群のパターン形成では対称性の破壊が困難であることに起因し,形成不可能なパターンが存在する.本研究では,乱択アルゴリズムを用いることにより,ロボット群が確率的に任意のパターンを形成できることを示した. (ii)有限バッテリーを持つロボット群による情報伝播:個々のロボットのバッテリー残量を考慮しながら直線上の情報伝播を行うアルゴリズムを示した. (iii)3次元グリッド内のモジュールロボット群の移動制御:3次元グリッド上に配置されたモジュールロボットを一方向に移動させるアルゴリズム,移動速度の上限を示した. (iv)3次元空間中のロボット群の合意問題:従来の2次元平面上でのロボットの合意問題を3次元空間に一般化し,平面合意能力の特徴づけを行った. これらの結果の一部は既に国際会議で採択され,発表済みである.他の結果については国際会議,論文誌に投稿準備中である.
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