研究領域 | 感覚と知能を備えた分子ロボットの創成 |
研究課題/領域番号 |
25104521
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研究種目 |
新学術領域研究(研究領域提案型)
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
小野 廣隆 九州大学, 経済学研究科(研究院), 准教授 (00346826)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 分子ロボットシステム / ランダムウォーク / マルコフ連鎖 / 省メモリアルゴリズム / エージェントモデル |
研究概要 |
本研究では確率的・記憶制限的・局所演算に基づく分子システムを,グラフ上をランダムウォークする記憶制限のあるエージェントの形でモデル化し,その計算能力の解明の視点から研究する.「分子ロボットシステム」の特徴を,①分子の挙動が多分に確率的であること,②各分子ロボットの「記憶」が非常に制限されること,③各分子ロボットの挙動は局所的な状況のみから決定されることの3点に集約し,分子システムを,記憶制限のあるエージェントが離散空間であるグラフ上を確率的に行動する系とみなすことにより,分子ロボットの制御問題は,ランダムウォークの設計問題へと帰着される.すなわち本研究は1)記憶制限のあるエージェントによるグラフランダムウォークによる分子システムのモデル化と,2)そのモデルに適した望ましいランダムウォークの設計論,の提供を目指すものである. 本年度の研究では,以下の結果を得た.(1) 「分子ロボットシステムの制御」の観点から,これまで提案した「DNA生体分子の二次構造変化に対するマルコフ連鎖モデル」を元に,計算実験,ならびにその計算実験の結果からの反応安定性に関する調査を行った.その結果,結合系ではいくつかの状態のエネルギー値が反応の安定性に寄与するという仮説を得ている.(2) (1)を単純化した理論モデルとしての,結合系ランダムウォークの全粒子結合までの期待時間の見積もりに成功した.(3) 粒子反発系の遷移モデルの研究の観点から,グラフ上の独立集合の遷移可能性の計算量の調査を行った.一般にグラフ上の独立集合の遷移可能性判定はPSPACE完全であることが知られている.ここでは粒子数,グラフの次数が十分小さい(多項式サイズ)の仮定の下では遷移可能性判定が多項式時間で計算可能であることが分かった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
概要で触れた結果が,応用数学に関するトップジャーナル, SIAM Journal of Discrete Mathematics 誌に掲載される,国際会議誌に採択されるなど,成果が上がっている.ただし,日程上の都合等から平成25年度中に国際会議等での場での成果報告が実施できておらず,これら成果発表は平成26年度以降に持ち越されることとなっている.
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今後の研究の推進方策 |
研究自体は順調に成果が上がっており,基本的に25年度の方針を引き継ぐ形で研究を行う.研究成果の公表に関しては,平成25年度は日程上の都合から実施できなかった国内外での研究発表を積極的に行っていく.
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