公募研究
新学術領域研究(研究領域提案型)
本研究では、コンピュータシミュレーションによる物質の設計・解析において現れる大規模な固有値問題を対象として、これらの分野において高速化や安定化のニーズの強い各種の問題の高性能な数値計算手法の開発を行うことを目的とする。計算量子科学分野で現れる各種の問題に対して、(1) 階層型固有値解法によるバンド構造計算法の高性能化と非直交基底への拡張、(2) 確率的推定法を利用した状態密度計算法の開発、(3) アプリケーションに組み込むことを想定したソフトウェアの実装、(4) 実問題を対象としたベンチマークによる性能評価と改善へのフィードバック、を実施する。階層型固有値解法を利用したバンド構造計算法の高性能化については、実空間密度汎関数法RSDFTを対象として、京コンピュータでの高性能化を目指し、Krylov部分空間のシフト不変性を用いた計算量削減や行列ベクトル積の高速化によって解法の高性能化を進めた。確率的推定法を利用した状態密度計算法の開発については、行列トレースのstochasticな推定法を用いた固有値分布推定法を、解法の持つ高い並列性を有効に利用する解法として実装した。これを用いてシリコンナノワイヤー4万原子規模のバンド図を求めることができた。アプリケーションに組み込むことを想定したソフトウェアの仕様検討については、RSDFTに加えて、オーダーN法第一原理計算プログラムCONQUEST、超大規模電子構造計算ソフトウェアELSESを対象として固有値解析エンジンの組み込みの検証を進めた。
2: おおむね順調に進展している
本研究課題で設定した本年度の実施課題は、おおむね計画通りに実施することができた。特に京コンピュータ向けの実装を行い、大規模計算環境での性能評価に着手した。確率的推定法を利用した状態密度計算法の開発では、GPUやIntel Phiなどのメニーコア環境での高性能化については、疎行列計算の高性能化手法の検討に留まり、実装を含む性能評価は今後の課題である。
平成25年度に京コンピュータ向けの高性能実装を進めることができたため、その成果を利用して、各種の実アプリケーションへの組み込みや実問題での性能評価を進める予定である。特にオーダーN法第一原理計算プログラムCONQUESTを対象として並列実装を行い、大規模問題を対象として開発手法の性能評価を行う。また、GPUやIntel Phiなどのメニーコア環境での高性能化技術の開発についても引き続き実施する。計算量子科学分野の研究者との分野横断的な研究協力を広げ、応用分野でのニーズに応じた物理量計算手法の開発を行うことを目指す。
すべて 2013 その他
すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件) 学会発表 (9件)
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