研究概要 |
平成25年度は、以下の研究テーマについて研究を行った。 (1) (Zn,Cr)Teへのアクセプターのドーピングによる強磁性抑制のメカニズム 強磁性半導体(Zn,Cr)Teにおいてアクセプター性不純物である窒素のドーピングによる強磁性抑制の効果を定量的に調べた。Cr組成一定で窒素濃度を系統的に変化させた一連の窒素ドープ(Zn,Cr)Te薄膜をMBEにより成長し、磁化測定を行った。その結果、Cr組成一定で窒素濃度を増加させていくと、強磁性転移温度TCは徐々に低下しやがて強磁性は消失するが、強磁性消失に対応する窒素濃度[N]の値はCr組成に対する比で[N]/[Cr]~0.08となり、単純な計算ではCr 1原子あたりおおよそ0.1個の電子数減少により強磁性の消失が齎されることがわかった。一方、X線吸収微細構造(XAFS)測定の結果では、この強磁性消失に対応する窒素濃度の前後で吸収スペクトルの形状に明らかな変化が見られた。これらのことから、窒素のドーピングに伴う強磁性消失とCrの電子状態の変化との間には相関があることが明らかとなった。 (2) 新規磁性半導体(Zn,Fe)TeのMBE成長と磁性 新規磁性半導体である(Zn,Fe)Teの薄膜結晶をMBEにより成長し、結晶構造と磁性を調べた。成長した薄膜の結晶構造と磁性は成長中のTeとZnの分子線供給量比により大きく異なることが明らかとなった。Te分子線過剰下(Te-rich)で成長した薄膜ではFe組成2%以上で正方晶FeTeの析出が見られ、磁性はFe組成に係わらず常磁性であった。一方、Zn分子線過剰下(Zn-rich)で成長した薄膜はFe組成3%以上で強磁性を示し、強磁性転移温度は最高で300K程度であった。結晶構造についてはTEM, XAFS解析により何らかの異相の微結晶の析出を示唆する結果が得られ、強磁性の起源はこの未知の析出物によることが示された。
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