研究実績の概要 |
数理原理複合手法として、2つの独自手法である、シフト型クリロフ部分空間型ソルバーと密行列複合型ソルバーの併用手法を提案し、バンドル状π共役高分子鎖(poly(1,4-phenylene vinylene), PPV)集合体計算への適用を行った。シフト型クリロフ部分空間はオーダーN型ソルバーであり、密行列型ソルバーより高速になりうる。しかし、前者が近似であるのに対し、後者は数値的な厳密解を与える。従って、両者の併用が重要となる。「京」や「Oakleaf-FX10」と言ったスパコン上での最適化や調査をおこなった。複合型密行列ソルバーは100万基底までは解く事ができることがわかり、それ以上はオーダーN型ソルバーが必須となることがわかった。ただし、上記はsingle shot計算であり、MDのような時系列計算ではオーダーN法が必須となる。手法応用として、バンドル状π共役高分子鎖(PPV集合体)をあつかい、配向自由度がそろうことが確認された。また、分子間にまたがった固有状態が見られた。これらは、エレクトロニクス系の本質である分子間電気伝導を考えるうえでの重要な知見といえる。本研究は本年度で最終であり、今後の展望としては、有機エレクトロニクス系を主目的とした量子電気伝導計算の大規模超並列計算があげられる。そこではこれまでとは異なった数理的問題(例えば波束ダイナミクスむけの時間依存シュレーディンガー型方程式の解法)を取り扱う必要がある。本研究を基礎として、さらなる「複合数理原理」をもってこれに取り組んで行きたい。
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