研究領域 | コンピューティクスによる物質デザイン:複合相関と非平衡ダイナミクス |
研究課題/領域番号 |
25104720
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研究種目 |
新学術領域研究(研究領域提案型)
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
篠原 正典 長崎大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (80346931)
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研究期間 (年度) |
2013-06-28 – 2015-03-31
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キーワード | 自己組織化膜 / プラズマ / 赤外吸収分光 / 官能基 / シリコン |
研究概要 |
物質創成・物質加工において水素の反応が大きく関与する。水素の反応を検出する方法は少ない。そこで,水素の検出感度の高い赤外分光法に注目し,高感度化した多重内部反射赤外分光法(MIR-IRAS)を用いた反応解析を行った。この方法では,シリコンなど半導体基板に赤外光を入射させ,基板内部で多重反射させることにより,基板表面の状態や表面に吸着した物質の検出感度を向上させている。それゆえ,シリコン基板自体の反応,シリコン基板へのシリコン基板上に堆積した物質の反応,およびシリコン基板への堆積過程について調べることが可能である。さらに,本方法は赤外光を用いるため,基板が置かれる雰囲気について制限されない。もちろん,プラズマ中でも制限されることなく,基板の表面状態を調べることが可能である。 また,プラズマは半導体の微細加工,様々な成膜プロセスに使われてきたが,その詳細な反応については分かっていない。詳細な反応が分かれば,微細加工および成膜プロセスの向上が見込まれる。本研究では,プラズマと物質の相互作用や表面反応の詳細を理解するために,シリコン自体の反応ばかりでなく,自己組織化膜との反応について赤外分光法を用いて調べ,反応プロセスの詳細を検討した。シロキサン結合を介してシリコン基板と結合上に堆積させることが可能な分子をの中で,単純な構造で,広く用いられているトリクロロオクタデシルシランを用いて,CH3で終端された自己組織化膜をSi表面に形成した。この膜に,エッチングや膜形成に最も基本となるプラズマである,水素プラズマや酸素プラズマとの反応を調べ,その反応プロセスを明らかにした。この自己組織化膜は,水素プラズマでは水素化により,酸素プラズマでは酸化によりエッチングされることが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
トリクロロオクタデシルシランを用いてSi基板上に作製したCH3で終端されたSAMに,酸素プラズマ,水素プラズマを曝露し,その反応過程について多重内部反射赤外吸収分光法で調べ,反応モデルを作製できた。今後,この反応モデルをゆるぎないものにするとともに,プラズマの種類・状態をかえて曝露して,その反応の変化を明らかにする。 NH2で終端されたSAMについては実験データは得られているが,スペクトルの解釈が十分ではないため,今後,解釈を突き詰めていきたい。
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今後の研究の推進方策 |
トリクロロオクタデシルシランを用いた SAMの酸素プラズマ,水素プラズマによるエッチング機構については,昨年度に解析することができた。ここで,酸素プラズマ照射ではSAMにOH基の形成が見られなかった。そこで,OH基を含むアルコール,水などの化合物をチャンバー内に導入しプラズマ化させてSAM表面への照射を試みる。この照射時に,プラズマ-膜表面相互作用,膜表面反応について多重内部反射赤外分光法で解析し,反応過程について明らかにする。 また,NH2で終端されたSAMについては得られた実験データの解析および実験を行い,酸素プラズマ,水素プラズマのとの反応について明らかにする。正に帯電しているこのSAM表面の電位を様々なプラズマ照射により制御する方法を探索する。 ここから,SAMの表面処理法について明らかにする。
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