単分子の集合体である自己組織化単分子膜は,半導体・金属などの基板上に生体分子・有機分子を固定させる際の界面層として用いられる。界面層の制御により分子の吸着を制御できるため,自己組織化単分子膜の表面処理が重要となっていくと考えられる。有力な処理法としてプラズマ処理が挙げられる。プラズマと自己組織化単分子膜との反応については十分に分かっていない。さらに,分子の安定な化学結合状態,様々な分子構造が存在すること,様々な官能基を担持させることができることを考えると,複雑な分子を単純化したモデルとしてみなせる。近年プラズマの医療応用が注目を集めているが,生体分子が複雑なため反応の詳細が分かっていない。生体分子の特徴を有する自己組織化単分子膜を使えばその詳細が明らかにできると考えられる。 そこで,本研究では,自己組織化単分子膜とプラズマの反応について,多重内部反射赤外吸収分光法によるその場・実時間計測を用いて,調べた。 まず,オクタデシルトリクロロシランから製膜した,直鎖状の構造を持つ単分子膜を用い,反応を調べた。水素プラズマを曝露した場合には膜の水素化の進行し,酸素プラズマの曝露の場合には酸化が進行して膜が,エッチングされていく。水素・酸素の混合ガスのプラズマを曝露した場合,水素化・酸化の反応が両方見られた。また,混合プラズマの場合が膜のエッチングが増大したと考えられた。さらに,アミン基,チオール基を担持した単分子を用い,反応を調べた。上で見られた反応は単分子が担持する官能基にかかわらず,進行する反応であることも分かった。 以上のように,自己組織化単分子膜とプラズマの詳細な反応の解析に成功した。自己組織化単分子膜ばかりでなく生体分子のプラズマ処理にも重要な知見を与える成果である。
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