研究領域 | 実験と観測で解き明かす中性子星の核物質 |
研究課題/領域番号 |
25105502
|
研究種目 |
新学術領域研究(研究領域提案型)
|
研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
関口 仁子 東北大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (70373321)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
|
キーワード | 三体核力 / 偏極ヘリウム3 / 核力 |
研究概要 |
本研究では陽子・ヘリウム3弾性散乱から、四核子系散乱における三体力の発現性、及びスピン・アイソスピン依存性を定量的に評価することを目的としている。 これまでに我々が行ってきた重陽子―陽子弾性散乱における三体力の研究から(1)中間エネルギー領域(入射粒子の核子当たりのエネルギーが100メガ電子ボルト付近)、(2)重心系100度付近、において三体力の効果が顕著である事がわかっている。陽子・ヘリウム3散乱においても、同様の条件が必要になる事が理論的にも予想されている。またスピン・アイソスピン依存性にアプローチするためには、偏極量の測定が重要である。本年度は、上記条件(1)、(2)における陽子・ヘリウム3散乱のスピン観測量測定を実現するための準備を行った。具体的には、100メガ電子ボルトの陽子ビームが得られる東北大学サイクロトロン・ラジオアイソトープセンター(CYRIC)の加速器を用い測定を行う事を想定し、検出器系の建設、及び偏極ヘリウム3標的の開発を進めた。偏極ヘリウム3の生成にはスピン交換法を採用、有限角度測定を実現するためのガラスセルの開発を行い、偏極生成に成功するところまで実現した。同時に、CYRIC においてテスト実験を行い、陽子・ヘリウム3起因のイベントを同定する事に成功した。 また、三体力を含む四核子系厳密理論計算の依頼をリスボン大学のDeltuva氏に依頼し、中間エネルギーにおける三体力の効果を理論的に見積もる事を進めている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、陽子ーヘリウム3散乱の測定器系の建設、及び偏極標的の建設を始めた。標的に方では、偏極生成に成功し、また加速器を用いたテスト実験も行う事ができた。これにより、陽子ーヘリウム3散乱の偏極分解能測定を行う基盤が出来た。
|
今後の研究の推進方策 |
陽子ーヘリウム3散乱の偏極分解能測定には、偏極標的の偏極度の向上が必須となってくる。現況では、目的としている偏極度20%には到達していない。今後は、標的セルの最適化を測るとともに、偏極度測定の精度をあげる工夫を行う事によって、散乱の非対称度の測定を可能にするシステムを構築する事を目指す。併行して、ビーム実験を行い、得られた結果と理論計算との比較を行う事により、三体力を含む核力によって四核子系散乱がどのように記述されるかを考察する。
|