研究領域 | 実験と観測で解き明かす中性子星の核物質 |
研究課題/領域番号 |
25105504
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研究種目 |
新学術領域研究(研究領域提案型)
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
江角 晋一 筑波大学, 数理物質系, 准教授 (10323263)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 国際研究者交流 |
研究概要 |
欧州共同原子核研究機構(CERN)の大型ハドロン加速器(LHC)における高エネルギー原子核衝突(陽子-陽子、陽子-鉛、鉛-鉛衝突)を核子対あたりTeV領域の衝突エネルギーで行い、ALICE実験及びATLAS実験での粒子相関を用いたデータ解析やその解析手法や結果に関する議論を進めた。米国ブルックヘブン国立研究所(BNL)の相対論的重イオン加速器(RHIC)における高エネルギー原子核衝突(陽子-陽子、重陽子-金、銅-銅、銅-金、金-金、ウラニウム-ウラニウム衝突)を核子対あたり数十~200GeV領域の衝突エネルギーで行い、PHENIX実験及びSTAR実験での粒子相関を用いたデータ解析や、上と同様にその解析手法や結果に関する議論を進めた。Purdue大学のProf. F. Wang氏と共同研究を進めるために、アメリカ・インディアナ州のPurdue大学へ行き、RHIC実験における2粒子相関の解析方針や将来計画等を議論した。また、国際会議で来日中のStonyBrook大学のProf. J. Jia氏を筑波大学に招きセミナーをしてもらうと共に、LHC実験における多粒子相関解析の将来計画等を議論した。大阪大学の北澤正清氏によるセミナーを実施し、クォーク・グルーオン・プラズマ(QGP)研究における粒子数の衝突事象毎の揺らぎを用いたQCD臨界点探索のための物理解析に関する議論を行った。筑波大学の益井宙氏が米国バークレー研究所から戻った後にSTAR実験を継続遂行し、楕円流等の粒子相関解析研究を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
多粒子相関を用いた研究として、重イオン衝突実験における高次方位角異方性の測定及び、陽子-原子核、重陽子-原子核の衝突実験におけるリッジ現象と呼ばれるジェット形状のビーム軸(η)方向への広がりの分布変化に関する研究や楕円型膨張等の研究を進めた。小さな衝突系ではあるがその衝突領域においても、高温・高密度のクォーク・グルーオン・プラズマ現象の兆候が見えているのではないかという観測結果が見つかり、特にこの1年間で多くの新たな解析や理論的な解釈が進展した。ALICE実験においては、鉛-鉛衝突実験データの解析を進めると共に、陽子-陽子及び、陽子-鉛衝突実験のデータを用いたのより長いη相関の解析を進めて、リッジ現象の原因の調査を進めた。PHENIX及びSTAR実験では、金-金衝突実験やその衝突エネルギー依存性を調べると共に、特にRHIC加速器の自由度を生かした様々な衝突系の実験データ(重陽子-金、銅-金等の非対称な衝突系)の物理解析を推進した。重陽子-金衝突系での楕円的膨張の兆候を見つけ、前方-後方の非対称性を観測し、銅-金衝突における中心ラピディティーに置ける指向的方位角異方性を観測した。また、金-金衝突実験における高次の反応平面に対する2粒子ジェット相関と2粒子HBT相関の依存性の研究を進めた。
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今後の研究の推進方策 |
特にビーム軸(η)方向への相関分布に注目して多粒子相関を用いた物理解析を、RHIC加速器での重イオン衝突を観測するPHENIX,STAR実験、及びLHC加速器での重イオン衝突を観測するALICE実験等において進める。また、陽子-原子核衝突や、重陽子-原子核衝突のような、小さくかつ前方・後方の非対称な衝突系における結果と、金や鉛等の原子核同士の重イオン衝突系における結果を比較する事により、リッジ現象と高次方位角異方性の関係を理解する事を目指す。実験的に観測される高次方位角異方性の強度は、衝突初期の核子分布の空間的な揺らぎが起源であると一般的には考えられているが、クォーク・グルーオン・プラズマ或いは高温・高密度核物質の衝突直後から、フリーズアウト(粒子放出)までの間の集団運動的な横方向や非等方的な膨張等の発展過程における揺らぎも、その起源の一部である可能性は大きい。そこで、終状態において実験的に観測される高次方位角異方性の強度とその方向に対する相対角度をイベント(衝突事象)選択の条件として、2粒子ジェット相関と2粒子HBT相関の物理解析を行い、これらのハードな物理で決まるジェット粒子相関の結果や、ソフトな物理で決まる方位角異方性の結果を、さらに多角的多面的なデータ解析に拡張する。実際には、揺らぎにより方位角異方性の強度が、その平均的な値よりも大きな事象か小さな事象により事象を選択する事により、クォーク・グルーオン・プラズマによるジェット粒子相関の変化や、HBT効果で観測可能な衝突領域の終状態における大きさや形状の変化を調査する。
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