公募研究
新学術領域研究(研究領域提案型)
本研の主要な目的は、X線衛星「すざく」などにより、マグネターと呼ばれる一群の中性子星を観測し、それらが真に超強磁場をもつことを実証することである。今年度には、「すざく」で2007年と2009年に取得された、4U 0142+61 と呼ばれるマグネターのデータを解析した。その結果、周期8.69秒に現れる硬X線パルスが、2009年のデータでは周期 15時間で振幅 0.7秒の正弦波的な位相変調を受けていることを発見した。これは中性子星が完全な球対称からわずかにずれ、慣性能率に6万分の1だけ非等方性が現れたため自由歳差運動が生じ、かつ硬X線発生領域が中性子星の対称軸からやや移動したため、自由歳差運動に伴いパルスの位相変調が起きたものと解釈されたる。このような変形が起きるには、10の16乗ガウスに達する超強トロイダル磁場が内在している必要があり、この値は4U 0142+61の双極子磁場より2桁も強い。これはマグネターの内部にきわめて強いトロイダル磁場が存在することを支持する貴重な結果で、Physical Review Lettersに掲載が受理された。また2013年8月に追観測された4U 0142+61の「すざく」データを解析したところ、同じ15時間でのパルス位相変調を確認できた。通常の磁場をもつ中性子星としては、Be型のトランジェントパルサー GRO J1008-57 からは約80 keVに、また低質量の主星をもつ 4U 1822-37 からは約33 keVに、電子サイクロトロン共鳴吸収を発見できた。5.4時間という極めて長いパルス周期をもつX線共生星 4U 1954+315では、「すざく」の観測により、その磁場強度が10の13乗ガウスに達する可能性が示唆された。
1: 当初の計画以上に進展している
研究の開始時点では、4U 0142+61の自由歳差の兆候が、データ解析を通じてすでに得られていたものの、確定的ではなかった。それを確定させ、論文として出版することができた。これは世界で初めての結果であり、この種の天体のトロイダル磁場を定量的に推定する極めて貴重な手段となる。その方法の開発に成功した意義は大きい。
2013年度の成果を受け、2014年度には以下の方針で研究を進める。(1) 4U 0142+61の2013年の追観測データをより本格的に解析し、結果を論文にする。(2) 「すざく」による他のマグネターのデータで、同様な自由歳差運動を探査する。(3) これらの結果にもとづき、ASTRO-H による観測の見通しを検討する。
すべて 2014 2013
すべて 雑誌論文 (8件) (うち査読あり 7件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (6件) (うち招待講演 1件)
Publications of the Astronomical Society of Japan
巻: 66 ページ: id. 35
10.1093/pasj/psu002
Physical Review Letters
巻: 印刷中 ページ: 印刷中
Publications of Astronomical Society of Japan
巻: 66 ページ: id 10, p.1-11
10.1093/pasj/pst010
巻: 99 ページ: 1d 9, p.1-9
10.1093/pasj/pst002
巻: 66 ページ: 印刷中
Astrophysical Journal
巻: 印刷中 ページ: 1-20
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10.1093/pasj/65.3.52
Memorie della Societa Astronomica Italiana
巻: 84 ページ: 547- 552