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2013 年度 実績報告書

原子核の電気双極応答測定による対称エネルギーの研究

公募研究

研究領域実験と観測で解き明かす中性子星の核物質
研究課題/領域番号 25105509
研究種目

新学術領域研究(研究領域提案型)

研究機関大阪大学

研究代表者

民井 淳  大阪大学, 核物理研究センター, 准教授 (20302804)

研究期間 (年度) 2013-04-01 – 2015-03-31
キーワード対称エネルギー / 中性子スキン / 双極分極率 / ピグミー双極共鳴 / 陽子非弾性散乱
研究概要

本研究の目的は、原子核物質の状態方程式の対称エネルギー項を調べることにある。飽和密度(~0.16 fm-3)付近を対象としている。対称エネルギー項は中性子星の性質、特に核子間相互作用による圧力、質量-半径相関、中性子・陽子密度比を決める鍵として注目されている。
申請者らがこれまでに開発してきた陽子非弾性散乱の手法を用いて中重安定核の電気双極応答を精密に測定する 。得られた電気双極応答から双極分極率およびピグミー双極共鳴強度を引き出し、対称エネルギーの値に強い制限を与えることを目的とする。原子核表面にできる中性子の層である中性子スキンを用いることが着目点の1つである。実験手法は確立している。必要なのは実験の実施とデータの解析である。
本年度は既に取得している鉛208核を標的とするデータの解釈に関する理論的考察と議論を進め、実験値から与えられる対称エネルギーの制限を数値として明確に引き出した。得られた結果をEuropean Physics Journal A誌、および物理学会誌に出版した。またInternational Nuclear Physics Conference 2013を始めとする国際会議、ワークショップ、研究会において成果を発表し、他の物理研究者と結果に関する議論を深めた。結果に関する反響は非常に大きく、論文の被引用数は多くの数に登っている。
平行してカルシウム48核と鉛208核のスピン磁気双極応答を引き出し論文を投稿した。また、鉛208核の状態密度に関する解析を進め論文を投稿した。それぞれレビュー作業中である。
さらにスズ120核のデータとジルコニウム90核のデータの解析を進め、それぞれ電気双極応答のエネルギー分布、双極分極率、ピグミー双極共鳴励起強度を引き出す作業を進めている。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

当初予定の既得データの解析、物理情報の抽出、理論的考察、結果の出版に関して想定以上の進展をしている。論文の出版が順調に進行している。
新しいデータを取得するための加速器ビームタイムの申請はスズの同位体のデータについて採択された。ジルコニウムの同位体に関する申請は継続審議となっている。

今後の研究の推進方策

原子核の電気双極応答B(E1)の測定を進める。実験には申請者がこれまでに開発してきた陽子非弾性散乱の前方角測定を用いる。実験手法についてはすでに確立している。実験には大阪大学核物理研究センターのスペクトロメータ「グランドライデン」を使用する。
測定したB(E1)から、双極分極率とピグミー双極共鳴強度を決定する。得られたB(E1)を励起エネルギーで割っ た値を全領域に渡って積分することで双極分極率が得られる。中性子閾値領域のB(E1)を積分することでピグミー双極共鳴強度が得られる。また同実験からスピン磁気双極強度の決定も可能であり、原子核の集団磁気励起の研究として興味深い。 得られた双極分極率およびピグミー双極共鳴強度から対称エネルギーの傾きパラメータの制限を引き出す。その値は中性子星内の核子間相互作用による圧力および中性子星の質量-半径相関を決める鍵として注目されている。
前年度にはカルシウム48核と鉛208Pbの解析によりスピン磁気双極応答および状態密度に関する値を引き出し、現在論文投稿中である。この出版作業を進める。
前年度はにスズ120核とジルコニウム90核に関する値の整理を進めた。最終結果を決定しえ物理量を引き出し、論文として出版する。またモリブデン96に関する解析を進める。
スズの同位体に関する実験について加速器ビームタイム申請を行い採択された。ビームタイムを実施して実験データ取得を進めたい。また、ジルコニウム同位体に関する申請は継続審議となったため、あらためて採択に向けて努力する。
一方でこれまで実験手法にあらたに崩壊ガンマ線測定を付加する計画を立案して準備を始めている。計画実現に向けて具体的な装置設計やビームタイム申請を進める。

  • 研究成果

    (6件)

すべて 2014 2013

すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 6件)

  • [雑誌論文] 中性子スキンと原子核物質の状態方程式2014

    • 著者名/発表者名
      民井淳、銭廣十三
    • 雑誌名

      日本物理学会誌

      巻: 69 ページ: 6-13

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Electric dipole response of 208Pb probed by proton inelastic scattering: constraints on the neutron skin thickness and symmetry energy2014

    • 著者名/発表者名
      A. Tamii他
    • 雑誌名

      European Physics Journal A

      巻: 50 ページ: 28-1-6

    • DOI

      10.1140/epja/i2014-14028-7

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Observation of Low- and High-energy Gamow-Teller Phonon Excitations in Nuclei2014

    • 著者名/発表者名
      Y. Fujita, A. Tamii他
    • 雑誌名

      Physical Review Letters

      巻: 112 ページ: 112502-1-5

    • DOI

      10.1103/PhysRevLett.112.112502

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Probing effect of tensor interactions in 16O via (p,d) reaction2013

    • 著者名/発表者名
      H.J. Ong, A. Tamii他
    • 雑誌名

      Physics Letters B

      巻: 725 ページ: 277-281

    • DOI

      10.1016/j.physletb.2013.07.038

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Studies of Electric Dipole Response in Nuclei Using the Scattering of Polarized Protons2013

    • 著者名/発表者名
      A. Tamii
    • 雑誌名

      Acta Physica Polonica B

      巻: 44 ページ: 571-580

    • DOI

      10.5506/APhysPolB.44.571

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Isospin mixing of the isobaric analog state studied in a high-resolution 56Fe(3He,t)56Co reaction2013

    • 著者名/発表者名
      H. Fujita, A. Tamii他
    • 雑誌名

      Physical Review C

      巻: 88 ページ: 054329-1-6

    • DOI

      10.1103/PhysRevC.88.054329

    • 査読あり

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公開日: 2015-05-28  

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