初年度の始めに行った理研RIBFで初めての炭素16不安定核陽子弾性散乱測定の成功から、さらに重く大強度の不安定核ビームを用いた同測定を可能とするために、新たな多芯線ガス検出器一式を作成し、このテストを行った。 重イオンビームを用いた検出器開発テストを放射線医学総合研究所の重イオン加速器施設であるHIMACにおいて行った。テストは2014年7月及び2015年2月に行った。7月には核子あたり200~300MeVのXeビーム及び原子番号が20~50までの様々な2次ビームを用いて、それぞれに対する測定効率及び位置分解能の評価を行い、100%の効率と100um(rms)以下の分解能を得た。この時使用したガスは50~200Torrの低圧イソブタンである。この結果は不安定核陽子弾性散乱を測定するために必要な条件を十分満たす結果である。さらに2月のテストでは他のガスを用いた場合の特性や、大強度ビームを用いた場合の性能を試験した。前回に加えてメタン及びエタンガスを低圧で用い、ビーム強度を5kHz~500kHz程度まで変えることで強度依存性を調査し、大強度下においても性能がほぼ変わることが無いことを確認した。 さらに2015年1月により実践的なテストとしてRIBFでの開発実験を申請しこれが認められ、2015年3月から4月にかけて実施した。これは新しい検出器構成と新しい粒子識別方法を用いた大強度の重い不安定核ビームの粒子識別を可能にする実証実験である。この測定に欠かせないのが、低圧ガスを用いた多芯線ガス検出器であり、この実験でほぼ1MHz近い大強度の不安定核ビームが実用可能であることが示された。これにより既に採択されているRIBFでの132Snの陽子弾性散乱測定が高い精度で実現可能であることを示した。翌015年度に本測定を実施する予定である。 また、本研究結果は我々が進めている研究だけでなく、不安定核実験物理の分野にとって非常に重要な成果である。
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