研究領域 | 直截的物質変換をめざした分子活性化法の開発 |
研究課題/領域番号 |
25105701
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研究種目 |
新学術領域研究(研究領域提案型)
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
佐藤 美洋 北海道大学, 薬学研究科(研究院), 教授 (90226019)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | メタラサイクル中間体 / 不活性結合活性化 / ロジウム / アレン / アルキン / カルボニル基 |
研究概要 |
遷移金属触媒によって3つの多重結合間で進行する[2+2+2]環化反応は,対応する6員環骨格を一挙に構築できることから合成的にも大変有用であり,これまで数多くの報告がなされている.一方,ヘテロ原子を含む多重結合が関与する[2+2+2]環化反応の例は少なく,特にC=O二重結合(カルボニル基)が挿入する[2+2+2]環化反応の例は稀である.我々は,Rh触媒存在下,アレンとアルキンから生成するローダシクロペンテン中間体の反応性に関する研究途上,基質となる分子中のアレン,アルキン,カルボニル基の配列によって全く異なるタイプの[2+2+2]環化反応が進行することを見出した.すなわり,触媒量の[Rh(cod)]BF4錯体とアレン,アルキン,カルボニル基を持つ基質を反応させると,多環式ピラン誘導体が立体選択的に収率良く得られた.一方,上述の基質とはアルキンとアレンの配置が逆になっている基質の反応では,7員環アルコール体が生成することを見出した.いずれの反応も,基質とRh触媒からローダシクロペンテン中間体が生成して進行していると考えられるが,前者の反応と後者の反応では基質分子中のアレン,アルキン,カルボニル基の配列が異なり,ローダシクロペンテン中間体においてRh-C(sp2)結合に選択的にカルボニル基の挿入が起こっているためであると考えられる.この想定反応機構を確認するために,後者の反応においてβ-水素を持たない基質を合成し反応を行ったところ,オキサローダサイクル中間体から直接的な還元的脱離が起こり生成したと考えられる8-オキサビシクロ[3.2.1]オクタン誘導体が収率良く得られた.本結果は,先の想定反応機構を支持するものであり,反応機構を解明することも出来た.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでの検討によって,メタラサイクル中間体が配向基のように作用し炭素―水素結合を活性化できる,という全く新しい形式の炭素ー水素結合活性化法を見出しており,今年度の研究はその展開としてメタラサイクル中間体の性質を検討し,新しい形式の炭素―酸素二重結合の活性化を経る環化反応の開発に至ったものである.本研究課題の目的は,不活性結合の一種である炭素ー水素結合の活性化を経る炭素―窒素結合形成反応の開発であり,目的とする反応そのものの開発には至っていないものの,本新学術領域の目標である「分子活性化」という観点に沿って研究は順調に進んでいると考えている.
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今後の研究の推進方策 |
先にも述べたが,これまでの検討により1)メタラサイクルを経由する新しい炭素―水素結合の活性化法,2)メタラサイクルの性質を利用した新たな炭素―酸素二重結合の活性化を経る環化反応の開発,に至っている.そこで今後は,これらの結合活性化を利用し,炭素-窒素結合形成反応へと展開していく予定である.具体的には,活性な窒素-金属結合をもつ金属試薬と上述のメタラサイクル中間体との反応を広範に検討していく予定である.
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