本研究課題は,「C(sp3)-H結合の活性化」を経由する「C-N結合形成反応」の開発が目的である.すなわち,最近申請者らは「Rh触媒を用いたメタラサイクルの形成をきっかけとするγ位C(sp3)-H結合活性化法の開発」に成功しており,本法は位置選択的なC-H結合の活性化には通常不可欠な「配向基」が不必要な新しい形式の「C(sp3)-H結合活性化法」として大変興味が持たれている.本研究課題の最終年度である今年度は,この「γ位C(sp3)-H結合活性化法」を経由する「C-N結合形成反応」の開発を目指し,申請者らが既に開発している「チタンー窒素錯体(Ti-N錯体)」や「ジルコニウムー窒素錯体(Zr-N錯体)」を窒素源として利用した「C-H結合」の「C-N結合」への変換を検討した.その結果,残念ながらが,計画した変換反応の開発には成功しなかった.その理由として,1)Rh-C結合とTi-N結合,あるいはZr-N結合のトランスメタル化が進行しにくい,または,2)Ti-N錯体やZr-N錯体の安定性が低く,Rh触媒によるγ位C(sp3)-H結合活性化の反応条件下では分解してしまう,のいずれかの理由であると推測されるが,現在のところ不明である.そこで研究の方向性を変え,本C(sp3)-H結合活性化法の機能拡張に焦点を絞り,様々な多重結合を持つ化合物を原料として調製した「ローダサイクル」のC(sp3)-H結合活性化能を評価した.その結果,エンーイン化合物から調製した「ローダシクロペンテン」がδ位のC(sp3)-H結合を活性化できることを見出した,本反応によって,スピロ骨格を有するシクロブタン誘導体が収率よく生成する.現在は,さらに本δ位C(sp3)-H結合活性化反応の適用範囲の拡大や不斉合成への展開を図り,検討を続けているところである.
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