公募研究
新学術領域研究(研究領域提案型)
従来の触媒化学は、触媒分子を設計・合成して溶液中で用いる均一系の触媒(分子触媒)と金属あるいは金属酸化物などの表面の特性を利用する不均一系触媒に大きく二分されて発展してきた。高効率・低環境負荷の物質変換プロセスの開発が希求される現在、触媒化学が果たすべき役割は大きい。触媒化学が社会に対して今後も継続的に貢献を行うためには、従来の学問分野の枠組みを超えた新しい触媒設計の概念が必要であろう。そこで本研究では、触媒調製の新しいアプローチとして、金属錯体を規整表面上に高密度かつ精密に集積することによって特異な触媒反応場を構築する手法の開発を行っている。今年度は、隣接する金属錯体間での協奏的な触媒機能を鍵とする特異な分子活性化機構の創出を目的として、申請者が重点的に取り組み始めた金表面上のジイソシアニド単分子層を用いて種々の触媒活性中心の近接集積構造を作製して触媒機能を検討した。その結果、金表面上に形成したジイソシアニド単分子層を介して高密度にロジウム種を固定化した表面は、α,β-不飽和カルボニル化合物水素付加反応に高い触媒と回転数と繰り返し利用性を示した。また、対応する均一系触媒条件よりも高い選択性で 1,4-還元体を与えた。高密度な金属中心の存在が選択性発現の要因と考えられる。複核中心の存在を活用したより高度な触媒反応場の構築に利用可能と期待される。単分子層の形成に用いたジイソシアニド分子を間隔を制御して配置した金属粒子の間に導入する試みにも着手した。その結果、数十nmのサイズの銀ナノ粒子の間の数nmのギャップに導入したジイソシアニド分子が表面増強ラマンスペクトルにより非常に顕著に観察された。この現象は、極度に分極した電界場に分子が存在することを示唆しており、これまでに開発してきた金属表面上でのジイソシアニド金属錯体単分子層を利用した特異な触媒反応場の構築への応用が期待される。
2: おおむね順調に進展している
年度当初の目標をほぼ達成したため。
本年度確立した金属錯体の2次元集積手法を他の種々の触媒反応に適用することにより、本手法の汎用性を確立する。また、ナノサイズの空間における高密度単分子層の形成技術をさらに高めることにより、特異な触媒機能の発現を目指す。
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