研究概要 |
準安定中間体による金属触媒による結合活性化は、その反応性により安定分子では見られない素過程を経由することが期待できる。これまでに我々は簡便に調製できるO-プロパルギルオキシムからの2,3-転位によって、N-アレニルニトロン中間体が効率的に発生することを見出している。今回、我々は過渡的に生成するN-アレニルニトロン中間体に対して、再度銅触媒が関与する新しいカスケード反応を開発した。例えば、マレイミドやフマル酸エステルのような電子不足オレフィンとの反応が、2,3転位-[3+2]付加環化-1,3-酸素移動を経てオキサゼピン誘導体へと効率的に変換されることを明らかにした。反応機構研究によりN-O結合開裂を伴う1,3-酸素移動過程が銅触媒により促進されることが示唆された。またN-アレニルニトロンが1,3-双極子としての反応性を示すことを明らかにした。1,4-オキサゼピンは生理活性物質に母骨格に見られることから、その効率的合成法として期待できる。一方親双極子剤としてトシルイソシアネートを用いた場合2,3-転位-[3+2]付加環化反応の後に脱炭酸を伴う再環化反応を経て、1,6-ジヒドロピリミジン化合物が生成することを見出した。この反応では1,4-水素移動過程を含んでおり、銅触媒がラジカル過程を促進することが示唆された。新規性の高いジヒドロピリミジン化合物を効率的に合成することができる。これらの反応では銅錯体がπ酸性機能のみならず、σ酸性触媒、一電子酸化還元触媒として多元的に機能することが鍵である。
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